老後の年金月額11万円、その現実と生活への影響:40年納めてもなぜ低い?不安への対策

会社員として60歳まで働き、しっかりと年金を納めてきたにもかかわらず、いざ受け取り始めた年金が「月額11万円」程度で驚いている方もいるかもしれません。特に長年年金を納めてきた方にとって、この金額で今後の生活が本当に可能なのか、大きな不安に直面することは少なくありません。この記事では、なぜ年金受給額が想定よりも少なくなるのか、その理由を解説しつつ、月額11万円の年金で老後を乗り切るための現実的な対策について深く掘り下げていきます。

日本の年金受給額、月11万円の現実と老後生活への影響日本の年金受給額、月11万円の現実と老後生活への影響

40年間納めても年金が少ない理由とは?

年金受給額は、加入していた年金の種類(国民年金か厚生年金か)だけでなく、現役時代の収入、そして年金保険料を納めた期間によって大きく変動します。一般的に厚生年金は国民年金よりも受給額が多い傾向にありますが、厚生年金に加入していたとしても、平均的な給与水準が低かった場合や、加入期間が短かった場合は、当然ながら年金額も少なく算出されます。例えば、平均的な収入(平均標準報酬額45万5000円)で40年間会社員として働いた場合の年金受給額は、およそ月額16万円程度とされています。今回のように年金が月額11万円というケースでは、40年間(20歳から59歳まで厚生年金に加入と仮定)での平均的な年収は250万円程度であったと推計されます。つまり、納付期間が長くても、その間の収入水準が年金額に大きく影響するのです。

月額11万円の年金で老後生活は成り立つの?

結論から言えば、年金月額11万円だけで生活を維持していくのは、多くの場合、困難と言わざるを得ません。総務省統計局が発表した「家計調査報告(家計収支編)」の2024年(令和6年)平均結果によると、65歳以上の無職夫婦世帯の1ヶ月あたりの平均消費支出は約26万円、そして65歳以上の無職単身世帯でも平均約15万円の消費支出が必要となっています。これらの統計データと比較すると、月額11万円という年金額だけでは、衣食住といった基本的な生活費を賄うのが難しい現実が浮き彫りになります。もちろん、個人差は大きく、支出を極限まで切り詰めることで不可能ではないのかもしれません。しかし、ゆとりある、あるいは標準的な老後生活を送るためには、年金以外の収入源や貯蓄が不可欠であるということを、真剣に受け止める必要があります。

年金不足への具体的な対策

年金受給額が想定より少ないと感じたら、将来的な困窮を防ぐためにも、できるだけ早い段階で具体的な対策を講じることが重要です。まず第一に検討すべきは、現在の生活費を詳細に見直し、無駄な支出を削減することです。固定費(家賃、通信費、保険料など)や変動費(食費、趣味娯楽費など)をリストアップし、削減可能な項目を探しましょう。支出を削減してもなお年金だけでは生活費を賄えない場合は、働くことを選択肢に入れるのが現実的です。例えば、無理のない範囲で週に2~3日、1日5時間程度のパートやアルバイトをするだけでも、時給1000円と仮定すれば、月額6万円程度の追加収入を得ることが可能です。これにより、年金収入と合わせて生活費の不足分を補うことができます。近年の低金利や投資ブームを受け、NISAなどを活用した投資で資産を増やそうと考える方も増えています。しかし、収入が限られている状況や、日々の生活が厳しい中で、リスクの高い投資に安易に手を出すことは、かえって大きな損失を招き、生活をさらに苦しくする可能性があります。投資を検討する場合は、必ず余剰資金で行い、リスクを十分に理解した上で慎重に進めるべきです。

月額11万円という年金額は、多くの高齢者世帯にとって、公的な統計データが示す平均的な生活費と比較すると、決して十分な金額とは言えません。長年年金を納めてきたにもかかわらず、なぜこの金額になるのかを理解し、その上で現実的な対策を講じることが、安心して老後を送るためには不可欠です。具体的には、徹底した家計の見直しによる支出削減、そして可能な範囲での就労による収入補填が、経済的な不安を軽減するための重要な柱となります。

参照:総務省統計局 家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概要
出典:Yahoo!ニュース(Financial Field)