石破茂首相は6月13日夜、物価高騰が続く現状への対応策として、国民1人あたり一律2万円を給付する案を検討していることを明らかにしました。この給付金案では、特に支援が必要な層として、子どもにはさらに1人あたり2万円が、住民税非課税世帯の大人には1人あたり2万円が、それぞれ上乗せされる見込みです。自民党と公明党は、この給付措置を今後の参議院選挙における公約の柱の一つに据える方向で調整を進めています。しかし、この検討表明に対しては、すでに国民民主党の玉木雄一郎代表がSNS上で「石破総理、やっぱり配るんですか」と疑問を呈するなど、野党を中心に批判や懸念の声も上がっています。
「減税は適切ではない」と説明する石破首相
石破首相は13日、記者団の取材に対し、物価高への最も基本的な対応策は、物価の上昇率を上回る「賃上げの実現」にあるとの認識を示しつつも、賃上げが十分に進むまでの間は、家計を直接的に支援する対策も必要であると述べました。その中で、首相は消費税の減税については否定的な見解を表明。「決定から実施までには1年程度の時間を要し、システム改修などのコストも大きくかかる」と指摘しました。さらに、消費税減税は所得に関わらず一律の減税となるため、「結果的に高額所得者により手厚い恩恵が及ぶことになりかねない」とし、「決して適切であるとは考えていない」と説明しました。今回の給付金案については、「決してばらまきではない」と強調。その目的は「本当に困っている方々、特に生活に苦しむ世帯に重点を置いて手厚く支援する」ことにあるとし、これを参議院選挙の公約に盛り込む方向で検討するよう、政府・与党の関係部署に指示したことを明らかにしました。
物価高対策としての給付金について語る石破茂首相
給付金案の具体的な内容と財源の方針
現在検討が進められている給付金案の具体的な内容は、国民全員に対して1人あたり一律で2万円を給付することを基本とし、さらに子ども(対象年齢あり)には1人あたり2万円を追加、そして住民税が非課税となっている世帯の大人には1人あたり2万円を追加で給付するというものです。これにより、例えば両親と子ども2人の標準的な4人家族の場合、合計で(2万円×4人)+(2万円×2人)= 12万円の給付が見込まれます。もしこの4人家族が住民税非課税世帯である場合は、大人の人数分も加算され、(2万円×4人)+(2万円×2人)+(2万円×2人)= 16万円の給付となる計算です。給付金の財源確保については、石破首相は「適切に確保し、後世に負担を押し付けるような赤字国債には依存しない」との明確な方針を示しました。また、給付作業に伴う地方自治体の事務負担を軽減するため、マイナンバーカードに紐付けられた公金受け取り口座を積極的に活用するなど、デジタル技術を活用した円滑な給付体制を構築することも同時に指示しています。
2万円という金額の根拠と給付時期の見通し
なぜ給付額が2万円に設定されたのかという金額の根拠について、石破首相は「家計調査の結果に基づき、特に生活必需品である食料品にかかる消費税負担額などを念頭に置いて算出した」と説明しました。給付の具体的な開始時期については、「今後、物価や経済情勢を見ながら適切に判断する」と述べるにとどまり、現時点では明確な時期は示されていません。ただし、自民党内の動きとしては、読売新聞の報道によると、小野寺五典政務調査会長は、給付対象となる子どもの年齢を「18歳以下」とする方向で調整を進めていることを明らかにしています。また、同党の木原誠二選挙対策委員長は、給付時期について「秋口が勝負」との認識を示しており、今年の秋以降の実施を目指す考えを示唆しています。
野党からの懸念と批判
石破首相による国民1人あたり2万円給付案の検討表明に対しては、野党各党から早くも懸念や批判の声が上がっています。国民民主党の玉木雄一郎代表は、自身のX(旧ツイッター)アカウントで、「石破総理、やっぱり配るんですか」「これはマズイでしょう」などと投稿し、政策の実効性や目的について疑問を呈しました。また、日本維新の会の吉村洋文共同代表(大阪府知事)も、「給付金は自治体に人件費も労力もかかる。非常に手間暇がかかる政策だ」と述べ、給付金実施に伴う地方自治体への事務負担増やコストを懸念するコメントを発表しています。
物価高に対応するため石破茂首相が表明した国民1人あたり2万円を軸とする給付金案は、子どもや住民税非課税世帯への加算措置を含んでおり、「本当に困っている人々」への支援を目的としています。消費税減税に代わる選択肢として、参院選の公約化に向けて検討が進められていますが、財源確保や自治体の事務負担、そして政策効果を巡って、今後も議論が続く見込みです。
【出典】