大阪万博、『超スマート会場』は失敗か?外国人ツアー客締め出しも指摘される問題点

日本は、最先端技術とホスピタリティーにあふれ、全てが効率的だと考える外国人観光客が多い。かつての日本製家電やSNSの影響だ。しかし、日本在住者は古い技術や非効率な組織運営を知っている。訪日客は数日でこのイメージとのギャップに気づく。大阪万博は、残念ながら、この「素敵ではない日本」の新たな例となっている。特に外国人観光客の体験において、多くの問題点が浮上している。

多くの人が、今年の大阪・関西万博の苦戦を予想していた。立地、予算超過、遅延、参加国離脱など、否定的な報道が続いたためだ。無事開幕して安堵したかに見えたが、実際には来場者、特に外国人からの評判は惨憨たるものだ。

万博は「先端デジタル技術を用いた超スマート会場」をうたい、チケット、マップ、パビリオン予約などを全てデジタル化し、アプリで手軽に操作できる「並ばない万博」を目指したはずだった。しかし、その実態は非常に不便で不評を買っている。実際に訪日客を案内した経験から言えるのは、地図アプリは見づらく、紙のマップを入手するには2時間並び、しかも200円を現金またはクレジットカードで支払う必要がある。たった1日のために4~5つのアプリをダウンロードする必要があり、支払いがなくても二重認証が求められ、さらにバグが多くすぐにフリーズして落ちる。キャッシュレス決済が原則とされているが、プリペイドカードの案内は見当たらず、特定の決済手段を持たない高齢者や外国人を想定していないかのようだ。

大阪万博会場とみられる場所で、来場者らしき人々が行き交う様子。デジタル化の不便さや待ち時間の長さを指摘する声が上がっている。大阪万博会場とみられる場所で、来場者らしき人々が行き交う様子。デジタル化の不便さや待ち時間の長さを指摘する声が上がっている。

さらに深刻なのは、多くの主要パビリオンが学校以外の団体予約を受け付けず、結果的に外国人ツアー客を事実上締め出していることだ。団体予約を受け付けている数少ないパビリオンで、20人の団体申し込みに対しわずか8人だけが当選したと連絡を受けた際には、私は絶句した。団体客なのだから、団体単位での抽選が当然ではないか。学校のクラスで入場できる生徒とできない生徒を分けるなど、本来あり得ない話だ。完璧な国だと思って日本を訪れた外国人ツアー客に、「8人しか入れません」とはとても言えなかった。

万博誘致を進めた前大阪市長が「日本人がデジタル技術に精通していなかった」と述べたことは、問題の一部しか捉えていない。DX(デジタル・トランスフォーメーション)を追うあまりUX(ユーザー・エクスペリエンス)がおざなりになった、と言えば聞こえはいいが、それ以前の問題がある。持続可能な開発目標(SDGs)への貢献を掲げながらも一部の来場客が「取り残された」と感じる不平等な運営方式、中身の薄い開催理念…。これでは3兆円の経済波及効果のみが目的のようであり、グローバル企業の宣伝ブースと化したパビリオンの羅列は、まさに日本の残念な面をよく表している。理念もリーダーシップもなく、想像力や共感力、そして問題点を即座に修正する機動力もない。技術は他国に周回遅れだ。これは今の政府にもよく当てはまる話ではないか。政治不信の海を漂流する日本政治より大阪万博に救いがある点は、10月には終わる、という事実だけである。

大阪万博は「超スマート会場」の実現をうたったにも関わらず、デジタル化の不便さ、外国人ツアー客の締め出しを含む不平等な運営、そして理念の欠如といった問題点を露呈した。これは単なる技術的な失敗ではなく、運営側のビジョンや来場者への配慮が不足していた結果と言えるだろう。異文化コミュニケーションアドバイザーであり、実際に訪日客を案内した石野シャハラン氏は、万博の問題点は現在の日本社会や政治が抱える問題と共通すると指摘する。この状況に対する唯一の慰めは、大阪万博が10月には閉幕するという点にある。

異文化コミュニケーションアドバイザー 石野シャハラン
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