旧ソ連構成国ジョージアにて、中国人組織がタイ人女性らを軟禁し、卵子を採取・販売する施設を運営しているとする深刻な疑惑が明らかになりました。この問題は、タイに帰国した一人のタイ人女性(30代)の証言によって浮上したものです。彼女はバンコク近郊で取材に応じ、自身の体験と、その施設に他に多くのタイ人女性がいた状況について詳細を語りました。
騙されてジョージアへ渡航、パスポートを没収される
証言した女性は昨年、フェイスブックで「ジョージアで代理母として出産する女性募集。報酬は最大で月2万バーツ(約8万9000円)」という求人広告を見かけました。経済的に困窮していた彼女は、「家が貧しいので、お金が欲しかった」という動機からこれに応募しました。その後、飛行機でタイを出発し、アラブ首長国連邦(UAE)とアルメニアを経由してジョージアに入国しました。しかし、そこで待っていたのは、広告主とは異なる中国人組織でした。入国後すぐにパスポートを没収され、他の約60人のタイ人女性と共に、数カ所に分散する施設に連れて行かれました。
ジョージアの卵子採取疑惑について証言するタイ人女性 バンコク近郊
施設での軟禁状態と過酷な実態
施設にいた他のタイ人女性たちは、中国人組織に卵子を採取されることと引き換えに金銭を受け取っていたといいます。証言した女性は、施設内の状況について「体調が悪そうな人もいた」と述べ、健康状態に問題がある女性もいたことを示唆しました。さらに、「逃げたら指を切り落とす」といった物理的な危害を加える脅迫も受けていたと明かしました。恐怖を感じながら帰国を訴えたところ、中国人組織から高額な金銭を要求されました。女性は最終的に、7万バーツ(約31万円)を支払うことでようやく解放され、タイに帰国することができました。
財団への相談と国際的な捜査へ
タイに帰国した女性は、昨年9月に犯罪被害者の女性らを支援するNPO法人「パウィーナー・ホンサグン子供・女性財団」に相談を持ちかけました。財団はこの情報をタイ外務省へ提供し、国際刑事警察機構(ICPO)を通じてジョージア内務省に通報しました。ジョージア内務省はこれを受け、今年2月には人身売買の疑いで捜査を開始したと発表しました。捜査の結果、施設にいたとされる外国人約70人のうち、タイ人女性3人がすでにタイへ帰国したことも確認されています。財団代表であるパウィーナー氏は、採取された卵子については「体外受精用に販売されているとみられる」との見方を示しており、この国際的な犯罪組織の実態解明のため、「国際的に連携して捜査する必要がある」と強く訴えています。
まとめ
ジョージアにおける中国人組織によるタイ人女性からの卵子採取疑惑は、人身売買と医療詐欺の深刻な側面を示しています。経済的に困難な状況にある女性が甘い言葉で誘い出され、異国で軟禁状態に置かれ、身体を搾取されるという、国際的な犯罪の典型的なケースと言えます。タイのNPOによる支援とジョージア当局の捜査開始により、事態は動き出しましたが、全容解明と被害者救済のためには、パウィーナー財団が指摘するように、関係国間の国際的な連携が不可欠です。
出典: Yahoo!ニュース / 時事通信