韓国の新政権において、李在明大統領が尹錫悦前大統領によって任命された長官たちと異例の「リレー国務会議」を開催している。5日にはのり巻きを添えた3時間40分の会議が行われ、さらに10日には昼休みを含む6時間の会議が開かれるなど、「極限国務会議」という言葉まで生まれている。この状況は、韓国の政権移行期における新たな展開として注目されている。
韓国 新政権の李在明大統領が国務会議の昼食でのり巻きを食べる様子。会議の長時間化を示す一場面。
会議の異例な内容と緊張感
前日の国務会議では、李大統領が長官たちに対し、具体的な政策に関する踏み込んだ問答を行ったという。「なぜ医学部の定員を据え置いても医師は戻らないのか」「トニー賞はミュージカル分野でどのような意味を持つのか」「対北ビラ散布には厳格に法を適用すべきではないか」など、多岐にわたる質問が投げかけられた。さらに、尹錫悦政権が過去に複数回拒否権を行使した「3大特検法」(内乱特検法、金建希女史特検法、殉職海兵特検法)も全て議決された。会議に出席した国務委員の一人は、「前政権と現政権で政策の方向性が異なるため、困惑することが多かった」と当時の心境を明かしている。
過去の政権移行との比較
このような国務会議の進め方は、長官たちにとって全く予想外だったという。大統領選挙前に政権末期での辞任を考えていた人々を引き止めた李周浩首相職務代行も同様だった。李代行は当時、文在寅元大統領の事例を挙げ、「たとえ李大統領が当選しても、すぐには国務会議を主宰しない可能性が高い」と説得し、長官たちの残留を促したという。文在寅政権は、朴槿恵大統領の弾劾後、大統領職引き継ぎ委員会なしで発足したが、文大統領は就任後しばらく国務会議には出席しなかった。黄教安元首相の辞表は政権発足直後に受理されたものの、当時の柳一鎬経済副首相が首相権限代行を務め、国務会議を約1カ月近く開催した。文大統領が国務会議を主宰するようになったのは、李洛淵首相が任命され、文政権出身の長官が半数近くを占めるようになった、新政権発足から約2カ月が経過した時点だった。当時の国務会議出席者の一人は、「文前大統領の時と似た形になると思っていたので、李大統領が就任翌日に国務会議を開いたことには驚いた。皆、かなり大変なはずだ」と語っている。
長官たちの苦悩と特検法への見解
尹錫悦政権出身の長官たちは、国政運営において国務会議への出席が必須であるため、当面は職務を継続するという立場だ。しかし、彼らが苦痛を吐露するのは、自身の信念とは異なる立場での対応を求められているからである。特に前日の特検法処理に関しては、李代行が李大統領に対し、「特検法に反対した国務委員も少なくないが、次の国務会議で法案処理の提案をする」と伝えた。他の一部の長官からも、「与野党が合意した特検が必要だ」という意見が出されたという。これに対し、「何でも話してほしい」と促していた李大統領も、「三権分立になっており、国会で与党が推進していることを『するな』とは言えない」と、ある種の困難を吐露したとされる。
統合に向けた努力か?異なる評価
こうした状況に対し、一部からは、尹錫悦政権発足直後に前政権出身者を理由に韓相赫元放送通信委員長や全賢姫元国民権益委員長(現共に民主党議員)の国務会議への出入りを防いだ前例と比較し、「李大統領が統合のための努力をしているのではないか」という評価も出ている。異例の会議形式は、新旧政権間の複雑な力学と、今後の政権運営の方向性を示唆するものとして、引き続き注目を集めている。
結論
李在明新政権下で展開されている、尹錫悦前政権の長官たちとの「極限国務会議」は、その異例な形式と議論の内容において、韓国の新たな政権移行期の独特な様相を呈している。新大統領の積極的な関与と、それに対応する長官たちの困惑、そして過去の事例との比較から浮かび上がるこの状況は、今後の国政運営における課題と展望を示唆している。