交戦が続くイスラエルとイランの間で、ロシアが仲介役を申し出ている。ロシアは、イランの核問題を含む平和的解決への支援姿勢を示すことで、米国のトランプ政権を懐柔し、ウクライナ侵攻を巡り欧州が求める対露制裁強化に米国が同調するのを阻む狙いがあるものとみられる。
緊迫する情勢下での仲介提案
ロシアのプーチン大統領は、イスラエルとイラン両国への働きかけを活発化させている。6月13日にはイランのマスード・ペゼシュキアン大統領、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と相次いで電話会談を実施。翌14日にはトランプ米大統領とも電話会談を行った。これらの会談で、プーチン大統領は緊張緩和に向けた「仲介役を務める用意がある」との意向を伝達したとされる。特にトランプ氏との電話会談は、ウクライナ情勢も主要議題となる先進7か国首脳会議(G7サミット)の直前であり、かつトランプ氏の79歳の誕生日というタイミングで行われた点が注目される。
ロシアの真の狙いは?対米・対欧州への影響力行使か
ロシアがこの時期に仲介役を積極的に申し出る背景には、複数の外交的狙いがあると考えられている。最も直接的な狙いの一つは、対露制裁に消極的な姿勢を見せているトランプ氏との個人的な関係を深めたいという思惑だ。これにより、米国が欧州主導の対露制裁強化に同調することを阻止したい意図が滲む。プーチン大統領は、ウクライナとの交渉を続ける考えも示しており、仲介提案と併せて自身の外交姿勢をアピールしている可能性がある。また、イランの核問題を巡っても、ロシアは数か月前から米国側に対し、交渉支援の意向を伝えていたとされる。米政策研究機関「戦争研究所」(ISW)は、こうしたロシアの行動について、「米国が国際的な問題で成果を達成するために必要なパートナーとしてアピールする考えだろう」と分析している。
中東情勢について電話会談を行うロシア、プーチン大統領
中東での影響力回復への思惑
ロシアは、長らく後ろ盾となってきたシリアのアサド前政権が昨年12月に崩壊したことで、中東地域における影響力と威信を一時的に低下させている。このような状況下で、イスラエルとイランの対立激化は、ロシアが再び中東への関与を強める好機と捉えている可能性がある。仲介役として中心的な役割を担うことで、地域における存在感を回復させたいという思惑が働いていると考えられる。
仲介の実現性への疑問
しかし、ロシアがイスラエルとイランに対して、どの程度の影響力を行使できるかは不透明だ。ロシアとイランは今年1月、軍事技術協力の発展などを盛り込んだ「包括的戦略パートナーシップ条約」に署名しており、一定の関係強化は見られる。だが、米ブルームバーグ通信は、核問題を巡る交渉仲介の申し出に関し、イラン側がロシアの動機に不信感を持っているとの専門家の見方を報じており、ロシアの仲介提案が両国に受け入れられるかどうかは予断を許さない状況である。
参考文献
- 読売新聞
- Reuters
- Institute for the Study of War (ISW)
- Bloomberg News