女性たちはしばしば「努力は必ず報われる」と信じ、仕事やキャリアにおいて熱心に取り組んでいます。しかし、懸命な努力にもかかわらず、いまだに十分な自信を持てずにいると感じる女性は少なくありません。この「女性の自信不足」という現象は、特定の文化や国に限ったものではなく、世界中で見られる傾向です。
なぜこのような状況が生まれるのでしょうか。その理由を探る上で、10年以上のロングセラーとなっている書籍『なぜ女は男よりも自信をもてないのか』(CEメディアハウス)が参考になります。この本は、アメリカの女性たちの経験談に加え、科学的な側面からも女性の「自信のなさ」に光を当て、米国で大きな議論を巻き起こしました。
モノクロ写真で考え込む女性、女性の自信不足のイメージ
女性の自信不足の現状:データが示す広がり
女性の自信不足は、成功者の個人的な話や、身近なエピソードの中だけでなく、統計的なデータや大規模な調査でも確認されています。そして、その傾向は無視できないほど顕著になっています。
イギリスの調査事例:半数の女性が自己不信を抱える
具体例として、2011年にイギリスの「リーダーシップ・マネジメント研究所」が女性を対象に行なった調査があります。この調査では、「自分の仕事に対してどれだけ自信があるか」という質問を含む一連の質問がされました。
その結果、回答者の半数の女性が「自分のパフォーマンスとキャリアに対して自己不信を抱いている」と答えました。これは、同様の質問に「自己不信を抱いている」と答えた男性回答者のわずか3分の1以下という割合と比較すると、大きな差を示しています。
『なぜ女は男よりも自信をもてないのか』書籍の表紙
アメリカでのデータが示す現実
この自信の欠如を示す証拠は、アメリカにも明確なデータとして存在します。カーネギーメロン大学の経済学教授であり、『そのひとことが言えたら…働く女性のための統合的交渉術』の著者でもあるリンダ・バブコック氏は、この問題をデータで裏付けています。
昇給交渉における男女差
彼女がビジネススクールの学生と共同で行なった研究では、驚くべき事実が明らかになりました。昇給の交渉を自ら行う男性学生は、女性学生のなんと4倍も多かったのです。
さらに、たとえ交渉を行ったとしても、女性が交渉する金額は男性よりも平均して30%も低いという結果が出ています。これは、単に交渉の頻度だけでなく、自己評価の低さが交渉額にも影響している可能性を示唆しています。
将来の収入予測に見る自己評価の差
イギリスのマンチェスター・ビジネススクールのマリリン・デイヴィッドソン教授は、この問題が「自信と期待の欠如」から来ていると指摘します。
マンチェスター大学の学生調査
デイヴィッドソン教授は毎年、自身の学生たちに、卒業後5年間の予想収入と、自分に「ふさわしい」と考える収入額を質問しています。
この調査を7年間続けた結果、毎年、男子学生と女子学生の間で答えに大きな開きが見られると言います。「男子学生が予想する収入は、女子学生よりも大幅に高く、『自分にふさわしい収入がいくらだと思うか』に対する答えでも、男女差は非常に大きいです」と彼女は述べています。
数字が語る現実:20%の自己価値低評価
具体的には、男性は平均して年収8万ドル(当時のレートで約660万円)が自分にふさわしいと考え、女性は6万4000ドル(約530万円)程度と考えていました。その差は1万6000ドルにもなります。
この数字は非常に衝撃的です。デイヴィッドソン教授の発見が現実的に意味するのは、女性は自分の価値を、男性が自分にあると信じている価値よりも、事実上20%も低く見積もっているということなのです。
結論:世界共通の課題としての「女性の自信不足」
一連の調査やデータは、「努力は報われる」と信じながらも自信を持てずにいる女性たちが、キャリアや収入の面で自らの可能性を過小評価している現実を浮き彫りにしています。イギリスやアメリカの事例が示す男女間の自信の差は、単なる感覚ではなく、具体的な数字として確認できる世界共通の課題であることを示唆しています。
参考文献
- 『なぜ女は男よりも自信をもてないのか』キャティー・ケイ、クレア・シップマン 著, CEメディアハウス 刊
- リンダ・バブコック氏(カーネギーメロン大学経済学教授)の研究
- マリリン・デイヴィッドソン教授(マンチェスター・ビジネススクール)の学生調査
- リーダーシップ・マネジメント研究所(イギリス)による調査