日本型組織『内』と『外』:変革の波が不祥事を暴く時代

ジャニーズ事務所の性加害問題、ビッグモーターによる不正行為、日本大学アメフト部の大麻汚染など、かつては組織内部で処理されがちだった数々の不祥事が、2023年頃から次々と表面化しました。これは単なる偶然ではなく、日本型組織を取り巻く社会構造に根本的な変化が起きている証拠です。今後は忖度が減少し、巨大な組織ですら外部からの告発に晒される時代が来ると考えられます。

閉鎖的な共同体意識が不祥事を隠蔽する構造

忘れてならないのは、共同体は閉ざされた内向きの集団だということです。いくら組織のなかで人間関係がよく、メンバーは公平、平等に扱われていても、それはあくまでも共同体のなかでの「正義」であり、社会的な「正義」だとはかぎりません。むしろ両者は相反する場合が多くあります。

例えば、同じ能力を持っていても、大企業の社員と中小企業の社員の給料には大きな格差があります。また、中小企業の社員は大きな失敗や病気で職を失うリスクが高い一方、大企業ではよほどのことがないかぎり雇用や地位が保障されます。
しかも、大企業の待遇が手厚くなり、社内で平等化が進むほど、中小企業やフリーランスとの格差は広がります。また、同じ大企業でも恩恵を受けるのは主に正社員であり、非正規社員は厚遇と無縁なのが現実です。

日本の組織における不祥事や隠蔽体質に関連する会議風景のイメージ日本の組織における不祥事や隠蔽体質に関連する会議風景のイメージ

このような共同体の内と外との格差、つまり「内外格差」が、メンバーを世間の厳しい視線にさらす原因になります。苦しい現実を世間に訴えても、零細企業や非正規の人たちからは共感を得にくい状況です。それを恐れてか、大企業のなかには自社の恵まれた待遇や手厚い保障を外部に隠そうとするところがあります。

企業における大企業と下請企業、正社員と非正規社員。芸能分野における大手芸能事務所とそれ以外の人。大学における看板スポーツ部員と他の学生など、様々な内外格差をもたらしている構造的な歪みが、これまで見てきた不祥事の頻発の背景にあると考えられます。現状の放置は限界に近づいています。にもかかわらず、組織の内部では自浄作用が働くどころか、メンバーはいっそう組織に従属する姿勢を強めている傾向が見られます。

グローバル化とデジタル化がもたらした「外」の目

こうした状況に対し、外部環境に大きな変化の波が押し寄せてきました。代表的なものが1990年代ごろから並行して進んだ急速なグローバル化デジタル化です。

ビジネスがグローバルな競争に晒されることによって、共同体閉鎖性や非効率な面が批判の対象となりました。また、海外の文化に触れる機会が増え、日本型組織特殊性が際立つようにもなりました。

さらにIT革命に象徴されるデジタル化は、スキルの価値を変容させました。特定の企業内でしか通用しない企業特殊能力や、一部のアナログ的能力の価値が低下しました(ただし、デジタル化が困難なアナログ的能力の中には、逆に価値が上がるものもあります)。同時に、その会社特有の慣行が見直しを迫られるようになりました。

そして、グローバル化デジタル化は、もう1つの大きな波として組織を揺るがしています。それは、組織を取り巻く世間の目が格段に厳しくなったことです。今世紀初頭あたりから、欧米や国際機関は企業のコンプライアンス(法令遵守)を求める動きを活発化させ、次々と新たな制度を設けてきました。

まとめ:隠蔽から告発へ、新たな時代へ

このように、日本型組織が持つ閉鎖的な共同体意識と、それに伴う内外格差は、これまで多くの不祥事を組織内部に留める要因となってきました。しかし、グローバル化デジタル化という外部からの大きな波は、組織の特殊性を浮き彫りにし、世間の目を格段に厳しくしています。結果として、組織内部の論理よりも社会的な正義が優先されるようになり、隠蔽されていた問題が告発や外部からの圧力によって次々と明らかになる時代へと突入したと言えるでしょう。


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