イスラエルや米国がイランの最高指導者ハメネイ師に対する「脅しのトーン」を強めている。イスラエルのネタニヤフ首相が「紛争を終結させる」として殺害に言及し、トランプ米大統領も「隠れている場所は正確に分かっている」と述べるなど、異例の言動が相次ぐ。では、このイラン最高指導者ハメネイ師とは、一体どのような人物なのだろうか。その経歴や権限、現在の立ち位置を探る。
イスラエルや米国との対立の中で演説するイラン最高指導者ハメネイ師。黒いターバンと白い顎髭が特徴的。
イスラエルや米国との対立の中で演説するイラン最高指導者ハメネイ師。黒いターバンと白い顎髭が特徴的。
白いあごひげ、黒いターバン、深く刻まれた眉間のしわ、鋭い眼光。公の場に現れるハメネイ師の風貌は、世界の主要メディアでも頻繁に取り上げられる。地域大国イランを率いる彼の発言や動向は、国際情勢に大きな影響を与えるため、その人物像は常に注目されている。
イランにおける最高指導者の権限
イランの最高指導者は、国防や外交といった国家の最重要事項について最終決定権を握る、事実上の国家元首である。国民の選挙で選ばれる大統領や内閣よりも強大な権限を持ち、その意向は国の内外の政策に決定的な影響を及ぼす。
シーア派聖職者として
同時に、ハメネイ師はイスラム教シーア派の最高位聖職者「アヤトラ」の称号を持つ。イランにおける黒いターバンの着用は、イスラム教の預言者ムハンマドの子孫であることを示す伝統的な慣習だ。世界で唯一のシーア派国家であるイランにおいて、彼は政治と宗教の両面から国家を導く、絶対的な存在と言える。
経歴と権力への道筋
現在85歳のハメネイ師は、1939年にイラン北東部のシーア派聖地マシャドで、聖職者の家庭に生まれた。神学を深く学び、後にイラン革命を主導し初代最高指導者となるホメイニ師に師事した。1960年代には、親米派のパーレビ国王が進めた西欧化政策「白色革命」に強く反対し、幾度となく投獄される経験を持つ。1979年のイラン革命成功後は、精鋭部隊である革命防衛隊の司令官や国会議員などを歴任。1981年から1989年まで大統領も務めた。
変わらぬ反米・反イスラエル路線
そして1989年、ホメイニ師の死去に伴い、第2代最高指導者に就任した。この時から今日に至るまで、彼は一貫して強硬な反米・反イスラエル路線を貫き、両国に対する対決姿勢を鮮明にしてきた。
近年の対立激化と行動
2023年10月にパレスチナ自治区ガザ地区で戦闘が始まって以降、イスラエルとの対立はさらに激しさを増している。2024年4月には、イスラエルによる攻撃への報復として、初めてイラン本土からイスラエル国内へ直接ミサイル攻撃を実施するなど、緊張は続く。最近のイスラエル軍による攻撃を受けて以降、ハメネイ師は「制限のない報復」を宣言。弾道ミサイルなどをイスラエルに向けて撃ち込み、事態はさらに緊迫化した。先のテレビ演説では「米国はイランを降伏させられないことを知るべきだ」と述べ、徹底抗戦の構えを崩していない。
このように、イラン最高指導者ハメネイ師は、シーア派国家イランにおいて政治的・宗教的に絶大な権限を持つ、反米・反イスラエルの強硬派指導者である。イスラエルや米国からの脅迫が強まる中、その人物像と今後の動向は、中東地域の安定にとって極めて重要な要素であり続けるだろう。
出典: https://news.yahoo.co.jp/articles/7dc69256beb02e82067b23f6cdfca6da9f521ced