インド、エア・インディア機墜落事故:異例の長助走と双発エンジン不調の可能性

インド西部アーメダバードで発生したエア・インディア機の墜落事故に関し、離陸時の助走距離が通常より長かった可能性が浮上しています。当局は、2基のエンジンが同時にトラブルに見舞われ、十分な推力を得られなかった疑いを視野に入れ、詳細な調査を進めています。

事故の概要と犠牲者

ロンドン行き旅客機は今月12日、離陸直後に高度約200メートルから急降下し、空港から約1.5キロ離れた医学生宿舎の食堂付近に激突しました。この事故により、乗客・乗員および地上にいた医学生ら計約270人が犠牲となる甚大な被害が出ました。事故発生から19日で1週間となります。

インド、アーメダバードの墜落現場に残る航空機の尾部インド、アーメダバードの墜落現場に残る航空機の尾部

原因究明:長助走とラムエアタービン作動の指摘

事故原因の調査が進む中、英タイムズ紙はインド当局者の話として、旅客機が3500メートルの滑走路を離陸ぎりぎりまで使用しており、これは通常必要とされる距離より明らかに長かったと報じました。また、地元メディアNDTVは、事故当時、エンジントラブル発生時に電力などを供給するバックアップ装置「ラムエアタービン(RAT)」が作動していたと伝えています。通常は片方のエンジンだけでも飛行可能ですが、今回は電気系統の不具合などが原因で、双発エンジンが同時に問題を抱えた可能性が指摘されています。滑走路上で火花や煙、鳥の死骸が確認されていないことから、バードストライクの可能性は低いと見られています。

調査体制と今後の見通し

事故現場からは飛行データを記録した「ブラックボックス」に加え、15日には操縦室内の音声を記録した「ボイスレコーダー」が発見されました。インド政府は事故調査委員会を設置し、16日に初会合を開催しました。委員会は3カ月以内の報告書取りまとめを目指しています。

エア・インディアの運航への影響

この事故を受け、エア・インディア社では12日以降、急な欠航や機体トラブルが相次いでいます。地元メディアによると、12日から17日夕までに計83便が欠航し、そのうち66便が墜落機と同型のボーイング787でした。これは追加の安全点検に加え、イスラエルとイランの緊張激化による空域規制も影響しているとされます。17日にはアーメダバード発ロンドン近郊ガトウィック行きの便が出発直前に運休となりました。

急成長するインド航空業界と事故の波紋

インドでは経済成長と共に航空業界が急速に発展しており、国内線利用者数は2019年の1億3760万人から2024年には2億2800万人に急増しています。国内路線も大幅に増加し、政府は各地の空港を重要なハブ空港とすることを目指しています。今回の墜落事故は、この急成長する業界にとって大きな衝撃であり、今後の発展に冷や水を浴びせる可能性も指摘されています。

エア・インディア機墜落事故の原因究明は、エンジントラブルや離陸状況に焦点が当たっています。事故はすでにエア・インディアの運航に影響を与えており、急速に発展するインド航空業界全体にとっても重要な岐路となる可能性があります。当局による徹底した調査結果が待たれます。