米軍イラン攻撃論争:トランプ氏支持層で深刻な分断

イランへの米軍攻撃の可能性が取り沙汰される中、この問題の是非を巡りトランプ米大統領の支持基盤が分裂している。特に、国内問題最優先を掲げる「MAGA(Make America Great Again)」派の多くは軍事攻撃に反対の立場を取る一方、キリスト教福音派の有力者や共和党内の対イラン強硬派議員は攻撃を支持しており、トランプ氏は難しい決断を迫られている状況だ。

MAGA派の「泥沼回避」論

AP通信によると、MAGA運動を推進してきたスティーブ・バノン元首席戦略官は、MAGAの核心的理念は「泥沼の戦争はしないこと」だと強調している。彼は、2003年のイラク戦争での苦い経験が、2016年のトランプ氏の大統領選出馬とMAGAの伸長につながったと指摘した。他国への軍事介入を否定し、米国第一を訴える考えはMAGAの基本理念であり、イランへの軍事攻撃は報復を招き、結果的に長期的な紛争に引きずり込まれることへの根強い懸念がある。保守系テレビ局FOXニュースの元キャスターであるタッカー・カールソン氏も軍事攻撃に強く反対しており、「イランとの全面戦争は、トランプ氏の大統領職を事実上終わらせる」とまで言及している。

イランへの軍事行動を巡り、支持層の分裂に直面するトランプ米大統領イランへの軍事行動を巡り、支持層の分裂に直面するトランプ米大統領

一部のMAGA派と福音派・共和党保守派の支持

一方で、MAGAの中でも限定的な攻撃を擁護する声もある。トランプ氏に近い右派活動家ローラ・ルーマー氏は、核施設への一度の空爆は全面戦争ではないと主張し、これを理解できないのはなぜかとX(旧ツイッター)に書き込んだ。

トランプ氏の強固な支持基盤であるキリスト教福音派は、宗教的な理由から親イスラエルの立場を取る。福音派牧師ジョン・ハギー氏は、トランプ氏がイランの交渉担当者や孤立主義者に操られることはないだろうと述べ、イランの「無力化」のために必要な措置を講じるべきだとFOXニュースで指摘した。「イスラエルのためのキリスト教徒連合」を率いるハギー氏のような人物は、イランへの強硬姿勢を支持している。

さらに、共和党内の対イラン強硬派議員も、トランプ氏が軍事攻撃の可能性を排除しない姿勢を評価している。トランプ氏に近いリンゼー・グラム連邦上院議員は17日のFOXニュースで、「イランの核開発計画を破壊できれば、歴史的な出来事になる」と主張し、軍事オプションへの期待感を示した。

副大統領による支持層への呼びかけ

こうした支持層内の対立意見がある中、J.D. バンス副大統領はトランプ氏の最終的な決断への支持を呼びかけた。17日のX投稿で、過去25年間の外交政策への懸念から人々が外国情勢に巻き込まれることを懸念するのは当然だとしながらも、トランプ氏が「米軍の力を米国民の目標達成のためだけに関心を払っていると保証する」と述べ、国民の利益を最優先にした判断が下されることを示唆し、理解を求めた。

トランプ氏にとって、再選を目指す上で支持基盤の動向は極めて重要であり、今回のイラン攻撃を巡る対応は、今後の支持に大きな影響を与えかねない。MAGA派の「泥沼回避」論と、福音派・共和党保守派の「強硬措置」論の間で、極めて難しい政治判断を迫られている状況だ。

毎日新聞 via Yahooニュース