映画「国宝」を観たら必読! 吉沢亮主演作の奥深さを紐解く原作小説

「推し」が演じるあの役は、原作ではどう描かれている? 映画やドラマの原作小説に迫る本コラム。今回は、公開が待たれる映画「国宝」の原作小説に注目します。吉沢亮さん主演、横浜流星さん、渡辺謙さん出演で贈る本作は、吉田修一氏の傑作小説が原作です。映画を観る前に、あるいは観た後に、原作を知ることで作品世界はさらに広がります。

映画「国宝」:圧倒的な没入感とキャストの熱演

この映画を観てまず感じたのは、その圧倒的なまでの没入感でした。3時間という上映時間を全く感じさせない展開は、まさに時間を忘れるほど。主演の吉沢亮さん、共演の横浜流星さん、渡辺謙さんといった豪華キャスト陣が織りなす人間ドラマに、観客は引き込まれていきます。特に、実際に吉沢さんと横浜さんが演じる歌舞伎のシーンは圧巻です。「娘道成寺」「鷺娘」「曽根崎心中」といった演目が登場し、その完成度は本職の歌舞伎役者からも絶賛されるほど。歌舞伎に馴染みがない方でも、その美しさ、迫力、そして役者の魂が伝わる熱演にきっと心を奪われるでしょう。

映画「国宝」に関連するイラスト。吉沢亮と横浜流星が演じる歌舞伎シーンのイメージ。映画「国宝」に関連するイラスト。吉沢亮と横浜流星が演じる歌舞伎シーンのイメージ。

原作小説『国宝』:壮大な物語と深遠な世界観

本作の原作は、吉田修一氏の傑作小説『国宝』(上下巻、朝日文庫刊)です。2018年刊行、第69回芸術選奨文部科学大臣賞、第14回中央公論文芸賞を受賞しています。物語は、昭和39年、長崎の極道一家に生まれた14歳の立花喜久雄が、抗争で父を失う場面から始まります。関西歌舞伎界の重鎮・二代目花井半二郎は、喜久雄の才能を見抜き引き取ります。彼は自身の実子・丹波屋俊介と共に喜久雄を鍛え上げますが、歌舞伎界で重視される「血筋」を持たないことが、成長した喜久雄を苦しめ始めます。半二郎の怪我を機に、その代役に指名されたことで運命が大きく動き出す喜久雄。相次ぐ困難や芸能界の浮き沈みの中、芸道に全てを捧げた彼の50年が、力強く描かれます。

映画と原作:それぞれの魅力と補完関係

映画は原作の設定や主要な展開を踏襲しつつ、3時間に凝縮し、舞台シーンに焦点を当てています。そのため、原作未読の方には物語の進行が速く感じられたり、「あの人物はどうなったのか」「間に何があったのか」と、描かれなかった部分が気になるかもしれません。その疑問を解消し、物語世界をさらに深く探求できるのが原作小説です。映画では時間の都合でカットされた豊富なエピソード、登場人物たちの繊細な心の動き、そして小説ならではの情景描写が、『国宝』の壮大な世界観を余すところなく伝えてくれます。映画で感動した体験を、原作でより豊かな読書体験へと繋げてみてください。

映画「国宝」は、その視覚的な迫力とキャストの熱演で観る者を魅了します。しかし、主人公・喜久雄の生涯の深みや歌舞伎界の息遣いをより詳細に知りたいなら、ぜひ原作小説『国宝』を手に取ってみてください。映画だけでは描ききれない人間ドラマやエピソードの数々が、あなたの作品体験をより豊かなものにしてくれるでしょう。

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