「コメ騒動」の裏側:現場の農家が語る厳しい現実

最近、ニュースで頻繁に取り上げられるコメ騒動。政府や農協、そして農家自身の姿も報じられますが、断片的な情報では実態が見えにくいと感じる読者もいるでしょう。新潟県燕市で約200年の歴史を持つ大原農園の7代目、大原伊一さんは、政府の政策や報道は「現場目線でない」と厳しく指摘。このままでは多くの農家が経営継続を断念せざるを得ない状況になり得ると警鐘を鳴らしています。日本の稲作の危機的な現状に迫ります。

新潟県燕市、大原農園での稲刈り作業。農家の厳しい現状を象徴する風景新潟県燕市、大原農園での稲刈り作業。農家の厳しい現状を象徴する風景

上昇する資材費と低迷する米価の乖離

大原さんは、今回のコメ騒動は「政府の計画が地球温暖化というリスクを加味してこなかった結果」だと断言します。需要に対してコメの供給が不足し、価格が急騰。これに対し政府は備蓄米の放出や増産奨励で対応しています。

しかし、こうした消費者重視の価格対策は、生産者である農家の現場では大きな不満を招いています。大原さんは、「農業機械資材の価格がここ数年で約20%も上昇しているにも関わらず、米価は長期にわたり低迷していました」と、経営を圧迫する現状を指摘します。

農林水産省のデータもこの事実を裏付けています。令和6年(2024年)の農業生産資材価格は令和2年(2020年)比で約2割高い一方、米価は23年8月まで20年を下回っていました。農業資材は自由経済、コメは管理経済(低価格目標)という政府の姿勢が、農業危機を招いているのではないかと大原さんは疑問を呈します。

大原さんは、「政府は5kgあたり2000円が適正価格だと信じ切っているようにしか見えない」と述べ、現場のコスト感覚との乖離を訴えています。このような状況下で、農家が持続可能な経営を続けることは極めて困難になっています。

今回のコメ騒動は、単なる需給のひっ迫だけでなく、長期にわたる農政の課題が浮き彫りになった形です。農業資材の高騰と米価の低迷という板挟みの中で、農家は厳しい選択を迫られています。現場の生産者の声に真摯に耳を傾け、彼らが安心して稲作を続けられるような、実効性のある政策が求められています。

参照:https://news.yahoo.co.jp/articles/29f9d52ac0b82f66145c6740b7ad776a60a585e8