アメリカがイランの核施設を電撃的に空爆しました。わずか10日前までは「核交渉」の相手国だったイランに対し、中東情勢への武力介入という形で攻撃を実行したものです。アメリカの対話提案に応じない北朝鮮の立場からすれば、今回のイラン攻撃は自分たちに向けた「警告状」として受け止める可能性が提起されています。トランプ大統領は21日(現地時間)の国民向け演説で、イランの核施設3カ所を爆撃したと発表しました。地下施設を壊滅させることを目的に、6発の「バンカーバスター」ミサイルまで動員し、イランが核施設を簡単に復旧できないよう精密攻撃を加えたとみられています。
米、イラン核施設を精密攻撃
アメリカはイスラエルと協力し、イランの核兵器製造施設や核物質生産施設など、主要な核関連施設の位置を正確に把握した上で攻撃を実行したと明らかにしました。この攻撃は、地下深くに設置された施設をも破壊可能なバンカーバスターを使用するなど、イランの核開発能力に長期的な打撃を与えることを目的とした精密な作戦であったと考えられています。攻撃対象となったのは、核兵器開発の可能性が指摘されていた特定の施設群であり、その破壊はイランの核プログラムを遅延させる意図があると分析されています。
イランの核関連施設(想像図または衛星写真)、米軍による攻撃の対象
米の情報網、北朝鮮の核施設位置も把握
北朝鮮の核施設は平壌近郊の寧辺(ヨンビョン)と降仙(カンソン)に集中しているとされています。さらに、北側の慈江道(チャガンド)一帯をはじめ、核ミサイル生産施設は各地に分散していると推定されています。寧辺や降仙の位置は広く知られていますが、アメリカは公にされていない施設の位置や役割についても、多角的な情報網によってかなりの程度まで把握しているとされています。これは、イランの場合と同様に、アメリカが潜在的な敵対国の重要施設に関する詳細な情報を収集・分析する能力を持っていることを示唆しています。
北朝鮮、衝撃と「対話不成立なら攻撃も」の懸念
そのため、北朝鮮国内では、アメリカのイラン空爆を少なからぬ衝撃として受け止める可能性があります。複数の核施設が単にアメリカの情報網に露出しているだけでなく、「対話が成立しなければ核施設を攻撃することもあり得る」という論理が明らかになったためです。これは、自国の核施設も標的となり得るという現実的な懸念を生じさせます。同時に、アメリカの情報網に主要な動線が露出しているキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記の身辺の安全問題とも直結する事案として捉えられる可能性があります。指導者の安全は北朝鮮体制にとって最重要課題の一つであり、この点での脆弱性が露呈することは大きな動揺につながりかねません。
「米国からの警告状」としての可能性
このような文脈から、北朝鮮は今回の事態を「アメリカからの警告状」として受け止める可能性があります。トランプ大統領は大統領選の遊説の際から北朝鮮を「核保有国(nuclear power)」と呼び、対話と交渉の再開を提案してきましたが、北朝鮮の反応は冷淡です。当初「核保有国」発言が出たときは、アメリカが北朝鮮の立場を大いに高めたものと解釈されましたが、イラン空爆が実行に移された現状では、核を保有する北朝鮮も「攻撃対象」になり得るという意味にも解釈される余地が出てきました。これは、核保有が必ずしも攻撃からの免罪符とはならないというメッセージとして、北朝鮮指導部に伝わる可能性があることを意味します。
「新たなアメリカ」への対応策と専門家の見解
北朝鮮は、今や核施設を攻撃する能力を持つ「新たなアメリカ」と対峙しなければならない状況になったと認識する可能性があります。国内的には対米構想をより深めつつ、外交戦略に新たな視点を加える必要性が高まった形です。
もちろん、イランと北朝鮮の国際的立場や核兵器保有の状況が異なる点から、単純な比較は難しいとされています。しかし、北朝鮮内部ではアメリカとの対話を当初の計画より早めに進める方向の外交戦略を立てる必要性と、アメリカに対する抑止力を強化するためにロシアとの長期的な密着を強化する方法が主要な選択肢となるとみられています。
多くの専門家は、アメリカの対北朝鮮アプローチがイランへのアプローチとは根本的に異なるとして、アメリカによる対北朝鮮の空爆は想定しにくいシナリオと見ています。例えば、梨花女子大学のパク・ウォンゴン教授は「イランは核開発の最後の一線を越えていなかったため攻撃が可能だったが、北朝鮮はすでに核兵器を保有しており、状況は根本的に異なる」と指摘しています。しかし、教授は同時に「トランプ大統領が実際に軍事作戦に踏み切った初の事例であるだけに、北朝鮮も内部的に緊張せざるを得ないだろう。北朝鮮は今回の事態を、核兵器保有の正当性をさらに強化する契機とするだろう」と述べ、北朝鮮の内部的な反応に注目しています。北韓大学院大学のヤン・ムジン総長も「アメリカがイランを攻撃できたのは、中東での主導権を握るための計算された行動だが、北朝鮮との戦争ははるかに大きな戦略的リスクが伴う」と、戦略的な違いを強調します。北韓大学校大学院のキム・ジョン教授も「北朝鮮は核兵器を保有しているため、イランのように容易に攻撃できないという点で状況は全く異なる」と述べる一方、「アメリカが軍事オプションを現実化した点から、北朝鮮内部で『対米強硬外交』の実効性を改めて検討する可能性はある」と語っており、専門家の間でも内部戦略の変化の可能性が指摘されています。
結論
イランの核施設への米空爆は、中東情勢への直接的な武力介入であると同時に、対話に応じない北朝鮮に対する間接的な警告として受け止められる可能性が指摘されています。北朝鮮は、自国の核施設や指導者の安全がアメリカの情報網に把握されている現実を改めて認識し、対米戦略の見直しを迫られるかもしれません。専門家は、北朝鮮の核保有状況がイランとは根本的に異なり、アメリカによる直接的な空爆の可能性は低いと見ていますが、今回の事例を受けて北朝鮮が対話戦略や抑止力強化策、特にロシアとの連携強化などを改めて検討する可能性は十分にあると考えられます。
参照:
- KOREA WAVE/AFPBB News
- Source link: https://news.yahoo.co.jp/articles/210726badf3e1ecad4b4d0f34f43a968101a5be9