イラン核施設攻撃で米イラン緊張激化 トランプ氏が「政権交代」に言及

米国によるイラン核施設への空襲後、米イラン間の緊張が一段と高まる中、ドナルド・トランプ米大統領は初めてイランにおける「政権交代」の可能性に言及しました。これは、米国の空爆に対してイランがホルムズ海峡封鎖という対抗措置を示唆した後になされた発言です。

トランプ大統領の「政権交代」論

前日のテレビ演説で、イランの核施設であるフォルドゥ、ナタンズ、イスファハンへの空襲成果を誇示したトランプ大統領は、この日もSNSを通じて攻撃の「記念碑的」な被害と米軍の高度な技術力を強調しました。さらに、トランプ大統領は「政治的に『政権交代』という用語を使うのは正しくない」と前置きしつつも、「現在のイラン政権がイランを再び偉大に(Make Iran Great Again)できなければ、政権交代しない理由はない」とコメントし、自身の選挙スローガン「MIGA」を付けて結びました。

ホワイトハウスのレビット報道官も23日、FOXニュースに出演し、大統領がイランとの平和的・外交的解決を望む姿勢を示しつつも、「イランがこれを拒否するなら、なぜイラン国民はこの暴力的な政権から権力を奪わないのか」と述べ、間接的に政権交代の可能性に言及しました。同報道官は、今回の空襲が米国をより安全にし、核の衝突を防いだと自己評価しました。

イランに対する「政権交代」の可能性に言及したドナルド・トランプ米大統領イランに対する「政権交代」の可能性に言及したドナルド・トランプ米大統領

米国務長官の姿勢と北朝鮮への示唆

これに先立ち、ルビオ米国務長官は、イランがこれまでの交渉でトランプ大統領を弄ぼうとしたと批判し、イランの交渉姿勢は核開発時間を稼ぐための偽装平和戦術だったと規定しました。ルビオ長官はイランの政権交代の可能性については直接言及を避けましたが、「イランが核兵器保有国になろうとし続けるなら、それは実際に政権を危うくすると考える」と述べ、余地を残しました。さらに、今回の空襲には、イランだけでなく米国の他の敵国に対しても警告メッセージを送る意図があったと強調しており、偽装平和戦術と核開発を並行する北朝鮮への示唆と解釈されています。

続くイスラエルとイランの応酬

23日にも、イスラエルとイランの間で空襲が続きました。イスラエルは米国が前日にバンカーバスター(GBU-57)で攻撃したイランの核施設フォルドゥを再び攻撃しました。イラン国営放送は、フォルドゥの地下ウラン濃縮施設が攻撃されたと報じました。イスラエル軍は、この施設の進入路を封鎖し、イランの核施設への接近を阻止する目的だったと説明しています。また、イスラエル軍はイランのイスラム革命防衛隊と連携するバシジ民兵隊の本部、政治犯収容施設として知られるエビン刑務所、テヘラン中心部のパレスチナ広場の時計塔など、首都テヘランの保安関連主要施設100ヶ所以上に爆弾を投下しました。これに対し、イランも同日40分間にわたりミサイル6、7発を発射して反撃しましたが、エルサレム地域で爆音が聞こえたものの、死傷者は確認されていません。

イランの対抗措置:ホルムズ海峡とIAEA

イラン議会はホルムズ海峡封鎖を決議したのに続き、国際原子力機関(IAEA)との協力を中断する方針だと、イランのタスニム通信が伝えました。イラン議会のモハンマド・バーゲル・ガーリーバーフ議長は、IAEAの専門性に対する客観的な保証が得られるまで、IAEAとの協力を中断する法案を承認する計画だと表明しました。具体的な法案内容は不明ですが、核拡散防止条約に基づくIAEAによる核施設査察・検証活動を制限する内容とみられています。

これに先立つ22日には、イラン議会がホルムズ海峡の封鎖を決議しました。最終決定は最高国家安保会議(SNSC)が行います。

ホルムズ海峡封鎖のリスクと影響

ホルムズ海峡はガルフ海域の入り口に位置し、ガルフ産油国の石油・ガス輸送路として極めて重要です。世界の原油消費量の約25%、液化天然ガス(LNG)消費量の約20%がここを通過しており、実際に統制される事態になれば、全世界のエネルギーサプライチェーンに深刻な衝撃を与える可能性が高いと見られています。1980年代のイラン・イラク戦争時には、双方によるタンカー攻撃や機雷設置で通航が脅かされましたが、イランが海峡を全面的に封鎖した前例はありません。

最高指導者ハメネイ師の反応

米国の核施設空襲後、イランの最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師は23日、SNSで「シオニスト(イスラエル)が深刻な失敗を犯し、大きな犯罪を行った」とし、「報いを受けなければならない」と表明しました。これはハメネイ師にとって、米国による空襲後初めての公式反応であり、米国やホルムズ海峡には直接言及しませんでした。

結論として、イラン核施設への攻撃を巡る米イラン間の緊張は、「政権交代」の可能性に言及されるまでにエスカレートしており、イスラエルとイランの直接的な応酬も続いています。特にホルムズ海峡の状況やIAEAとの協力中断の可能性は、国際社会にとって注視すべき重要な要素となっています。