イスラエルとイラン、「停戦合意」を巡る混乱とトランプ大統領の発表

攻撃の応酬が続いていたイスラエルとイランを巡り、米国ドナルド・トランプ大統領は「双方が停戦に合意した」と発表しました。これは中東情勢の新たな展開として世界に衝撃を与えました。しかし、停戦開始後すぐにイスラエルはイランからの攻撃があったと主張し、反撃を宣言。こうした状況を受け、トランプ大統領は「双方に停戦違反があった」と不満をあらわにしました。この突然の発表とそれに続く混乱は、国際秩序にも大きく影響を及ぼす可能性を秘めています。

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イランの報復攻撃は「抑制的」だったのか

トランプ大統領の停戦発表に先立ち、イランは中東カタールにある最大規模の米軍基地に向けて弾道ミサイルを発射しました。発射されたミサイルは合計14発と報じられており、これは以前イラン国内に撃ち込まれたバンカーバスターと同じ数とされます。しかし、これらのミサイルのうち13発が迎撃され、米軍基地への大きな損害は確認されなかったとみられています。史上初めてイラン本土が空爆されたことへの報復攻撃としては、その規模はかなり抑制的だったと分析されています。

さらに、イランは攻撃を事前に米国に知らせていたとの見方もあります。トランプ大統領は自身のSNSで、「イランの事前通告により、人命が失われることも負傷者が出ることもなかった。彼らに感謝したい」と投稿しました。戦闘が始まった当初の13日には、イスラエルの奇襲攻撃に対し、イランは200発もの弾道ミサイルで報復していたことと比較すると、米国への報復攻撃は圧倒的に規模が小さかったことが分かります。攻撃数日前には、このカタールの基地にあった米軍機が移動していたことも各メディアで報じられており、イラン側もそれを知った上で、あえて損害の出ない攻撃を選択した可能性が指摘されています。

トランプ大統領による突然の停戦発表とその波紋

イランによる米国への「抑制的」報復攻撃から数時間後、世界はトランプ大統領の突然の発表に驚愕しました。トランプ大統領は「皆さんおめでとう。イスラエルとイランが12時間の完全かつ全面的に停戦することで合意した」と宣言しました。そして、「24時間後、『12日戦争』は正式に終結し、世界はこれを称賛するだろう。イスラエル、イランの忍耐力と勇気、英知をたたえたい」と付け加えました。

トランプ大統領が提示した停戦案は、まず双方が6時間以内に現在の軍事作戦を終了し、段階的に停戦を開始。24時間後に停戦状態が続いていれば「終戦」とするという内容でした。しかし、この最初の6時間の期限に向けて、双方の間では「いまのうちに撃てるものは撃ってしまおう」と言わんばかりの応酬が続きました。CNNのプレイトゲン特派員は、「テヘラン上空の激しい対空砲火を目の当たりにしています。対空砲の曳光(えいこう)弾が空に向かっています。爆音もさることながら、対空砲火が首都上空をまぶしく照らしています」と当時の状況を報じました。

それでも期限の6時間が経過すると、イラン国営メディアは「停戦が始まった」と報道しました。イスラエル側も首相府から声明を発表し、「イスラエルは全ての作戦目標を達成しました。目的達成を受け、トランプ大統領が提示する2国間の停戦案に同意しました」と表明。これにより、表向きは双方が停戦案に応じた形となりました。

市民の声と複雑な感情

この停戦発表に対する市民の反応は様々です。ある市民は、「今朝、停戦のニュースを聞いてうれしかったですが、週末の空爆で家を破壊されたので、私と家族にとっては少し遅かったです。それでも停戦するに越したことはない。イスラエルとイラン、中東にとって新しい一歩になることを願っています」と語り、停戦への期待を示しつつも被害への複雑な心境を覗かせました。

また別の市民は、「2日前に大きな被害を受けたばかりで、イランを信じるのは難しく、複雑な思いです。平和と平穏を望んでいますが、達成できる確信がありません」と述べ、過去の経験からくる不信感と、今後の状況に対する不安を表明しました。停戦への合意が発表されたものの、長引く対立の中で市民の間には根深い不信感と慎重な見方が広がっていることがうかがえます。

今回のイスラエルとイラン間の「停戦合意」は、トランプ大統領による突然の発表によって実現したかに見えましたが、発表直後から停戦違反の主張が出るなど、その履行には不透明感が残ります。米国、イスラエル、イランそれぞれの思惑が交錯する中で、この停戦が中東の安定に繋がるのか、あるいは新たな混乱の火種となるのか、今後の情勢が注目されています。

参照元

  • トランプ大統領 SNS投稿
  • CNN 報道
  • イラン国営メディア 報道
  • イスラエル首相府 声明