「あなたを奪ったその日から」第10話:真実が暴かれた時、見えた“家族の幻”と断ち切られる情

カンテレ・フジテレビ系で放送中のドラマ『あなたを奪ったその日から』第10話が、6月23日に放送された。このエピソードでは、長きにわたる嘘がついに白日のもとにさらされ、登場人物たちの前に突きつけられたのは、これまで築き上げてきた“家族”という名の儚い幻だった。

美海(一色香澄)に、自分が誘拐された少女である萌子のこと、そして自身が美海を育ててきた罪を尋ねられた紘海(北川景子)は、ついに全てを自白する。それは、美海にとってあまりにも恐ろしい、残酷な真実だった。目の前にいる女性は、長年「お母さん」と慕ってきた人ではない。その事実に、美海は耳を塞ぎ、泣き崩れる。一方その頃、望月(筒井道隆)から、紘海が生き別れた娘である萌子を育てているという衝撃の事実を聞かされた旭(大森南朋)は、いてもたってもいられず紘海の家へ急ぐ。しかし、一足遅く、紘海と美海はすでに家を出た後だった。

二人が向かおうとしていたのは、長野にある姨捨だった。この地名は、古くから母子の別れを連想させる象徴的な場所であり、今回の逃避行の行く末を暗示しているかのようだった。母と娘、形は違えど確かに強い絆で結ばれていた二人の逃避行は、あと一歩というところで肉親である旭の手によって阻まれることになる。この第10話は、これまでエビ混入事件の責任を問われる側だった旭が、立場を一変させ、娘を取り戻すために行動を起こす“旭のターン”と呼べる回だった。

旭の動きは迷いがなく、そしてすばやかった。望月から話を聞くやいなや、彼は会社を飛び出し、紘海の足跡を追ってバス停にたどり着く。そこで対峙した紘海から、「あと1時間だけ」という懇願にも似た猶予を求められた旭は、無言で頷き、それを受け入れた。目の前で、行方が分からなくなっていた娘の姿を再びこの目で見ることができた。その事実が、旭に相手の願いを聞き入れるわずかな余裕を与えたのかもしれない。

「あなたを奪ったその日から」第10話の主要シーンイメージ「あなたを奪ったその日から」第10話の主要シーンイメージ

ついさっきまで、あの家の中ではたしかに「母と娘」という関係性だった二人。しかし、一歩外に出れば、その関係は崩壊し、赤の他人になってしまう。変わってしまったのは二人の間の絆、そしてそれをもたらしたのは、ただ一つ、「自分はこの人の本当の娘ではない」という揺るぎない事実だった。紘海は、この日がいつか来ると覚悟していたはずだ。10年前の事件について旭が苦しみ、懺悔する姿を見て、自身の罪悪感に苛まれたあの時から、遅かれ早かれ真実が明らかになる日を予期していたに違いない。

この第10話を視聴した多くの人が、「家族とはいったい何なのだろうか」という問いを自身の胸に抱いたことだろう。過去の復讐という動機から美海を誘拐したと告白した“母”である紘海に対し、美海は「悪い人でもいいから、お母さんの子でいたい」と懇願し、「一緒にもう一度逃げよう」と涙ながらに訴える。そこにあるのは、血の繋がりを超えた、子が親を慕う心からの純粋な真情だ。

真実を告白し、精神的に追い詰められた様子の紘海(北川景子)真実を告白し、精神的に追い詰められた様子の紘海(北川景子)

しかし、美海のその切なる願いは、決して許されることのない、歪んだ形の愛情に根差している。紘海は、美海を本来いるべき場所へ、実の父である旭のもとへ帰すべきだと深く理解していた。それがゆえに、たとえどれほど辛くとも、これまで育んできた擬似的な親子の情を自らの手で断ち切ることを選んだのだった。真実の光は、時に最も大切なものを容赦なく破壊する。残された登場人物たちは、この崩壊から何を学び、どのような未来を歩むのか、最終章への注目が集まる。