日本維新の会前幹事長を務めた藤田文武衆院議員は、日本の在日外国人政策に対する独自の視点を示している。その根底にあるのは、歴史的に培われてきた日本社会の共同体意識や保守的価値観を積極的に評価し、外国人がこれらの価値観に包摂される形での「共生」を重視するというアプローチだ。これは、個人の権利や多様性の強調を起点とするリベラルな考え方とは一線を画すものだ。「せっかく日本に来てくれたのだから、うまく日本社会に適合し、技能を高めて活躍して、素晴らしい人生を送ってほしい」。この藤田氏のメッセージに込められたのは、国籍に関わらず同じ土地で生き、自己実現を目指す人々への肯定感。体育教師から企業経営、そして政治家へと歩んだ彼の経験は、地域や国政の場で地に足をつけ、周囲と共に幸せを追求する生活者の息づかいを感じさせ、新時代の保守政治家としての姿を映し出している。
日本維新の会・藤田文武衆院議員(在日外国人政策について)
人口減少と外国人労働者問題の核心
藤田氏は、長年企業経営に携わった経験から、人口減少と少子高齢化が引き起こす深刻な人手不足が、介護、障害福祉、医療といった労働集約型分野に甚大な影響を与えていると指摘。人口問題があらゆる分野に波及するという強い危機感を抱いている。2024年の入管難民法改正による新たな「育成就労制度」への移行は方向性として正しいとしつつも、根本的な方針として、日本の全人口に占める外国人の割合、すなわち「ボリューム」に関する戦略的な議論と政策決定が不可欠だと強調する。単に労働力として受け入れるだけでなく、将来的に日本の総人口に占める外国人の割合がどの程度になるのか、そしてそれが社会構造やインフラにどのような影響を与えるのかといった長期的な視点が、これまでの議論には欠けていた視点だと指摘する。
戦略なき「なし崩し」への警鐘
日本政府はこれまでのところ、明確で全体的に整合性の取れた外国人受け入れの方針を持たず、各産業界や地域からの「人手不足だから緩和してほしい」という要望に応える形で、場当たり的になし崩し的に受け入れ枠を広げてきたのが実情だと藤田氏は厳しく批判する。このままでは、何年後に日本人口の何割を外国人が占め、潜在的に生じ得る文化摩擦、インフラ、社会保障などの潜在的な問題に対応できなくなるリスクが高い。一度増加した在日外国人に対して、「増えすぎたから日本から出て行ってほしい」と一方的に求めることは不可能であることを、政策決定者は深く認識すべきだと警鐘を鳴らす。
国と地方の連携不足という大問題
さらに藤田氏は、外国人関連政策を国と地方の両レベルで部門横断的かつ包括的にマネジメントする仕組みが、日本の現状では決定的に不足している点を大きな問題として挙げている。例えば、出入国管理は国の専管事項だが、在日外国人に対する様々な住民サービス(医療や教育、福祉など)を実際に提供し、地域社会での生活を支えるのは市区町村の役割だ。しかし、両者の間の情報共有や連携体制は不十分であり、突然予期せぬ外国人関連の問題が地域の現場で発生し、対応に苦慮する市区町村が多発している現実を示し、早急な改善を求めた。
藤田文武氏が提唱する在日外国人政策と人口戦略は、日本の将来像を見据えた長期的な視点と、社会全体としての受け入れ体制の整備という、これまで欠けていた議論の核心を突いている。単なる労働力確保策に留まらず、文化、社会構造、インフラといった多岐にわたる側面を考慮に入れた統合的な戦略の必要性、そして国と地方の連携強化を通じた実効性のあるマネジメント体制の構築は、持続可能な共生社会を実現するために不可欠な課題と言えるだろう。新たな時代の日本のあり方が問われている。