皇室典範の規定見直し、特に女性・女系天皇の容認に踏み込んだ読売新聞の提言「皇統の安定 現実策を」が注目を集めています。しかし、国会での皇位継承に関する与野党協議は、自民党の麻生太郎氏と立憲民主党の野田佳彦氏の意見対立により、今国会での取りまとめが見送られました。皇室の存続が危ぶまれる現状に対し、宗教学者の島田裕巳氏は「実現するなら今しかない」と、愛子天皇の誕生を現実的な選択肢として緊急提言しています。
皇室の危機的状況と求められる変化
島田氏は、現在の皇室が直面している皇族数の減少という危機的な状況を指摘し、皇室の存続のためには、女性天皇はもちろん、女系天皇についても想定しておく必要があるとの見解を示しています。男系男子による継承が将来にわたり可能であれば話は別だが、現代においては男性か長子かといった点に固執する時代ではないと主張。この重大性が国民に十分に認識されていない現状では、大胆な変化が必要であり、その手段として女性天皇の実現が国民の意識を大きく変える可能性があると提言します。
皇位継承に関する提言を行った宗教学者、島田裕巳氏
歴史的根拠と男系男子継承への疑問
歴史学の専門家の中には、過去の女性天皇をイレギュラーな事態に対応するためのものと捉える向きもありますが、島田氏はこれに一概に同意しません。古代の法典である養老律令・継嗣令には「天皇の兄弟、皇子はみな親王とすること。女帝の子もまた同じ」との条文が存在することを挙げ、これは女性天皇の子供も男性天皇の子供と同様に親王とする規定であると解釈されてきたと説明。明治時代に「王政復古」を掲げた国学者たちも、この条文を根拠に女性天皇を否定する考えはなかったと指摘します。男系男子での家系継続は天皇家以外にはほぼ例が見当たらず、いくら伝統とはいえ社会的には衰退していく状況にあると述べています。
現行議論されている代替策への批判
現在、国会などで議論されている女性宮家の創設や旧皇族からの皇籍復帰といった皇族数確保の代替策についても、島田氏はその効果に疑問を呈します。女性皇族が結婚後、その子供を皇族としないのであれば、それは本来の「宮家」とは異なり、むしろ皇族が結婚する際のハードルをさらに高めているように見えると批判。また、旧皇族の復帰については、実際に手を挙げる人物が現れるか不確かであり、たとえ名乗り出たとしても平等が重視される現代社会において新たな特権階級を作ることは国民の信頼を得られず、得策ではないとの見解を示しました。
「愛子天皇」を現実解とする提言
上記の分析に基づき、島田氏は皇位継承問題への現実的な一歩として、「愛子天皇」の可能性を提言します。歴史学者が過去の女性天皇を「中継ぎ」と見る見解があることに触れ、皇位を将来の悠仁親王へつなぐまでの一定期間、愛子さまが「中継ぎ」の役割を果たす形を提案。これにより、保守派が望む男系男子による継承の道筋を当面確保しつつ、愛子天皇の時代に女性・女系天皇への国民的容認が進む可能性も生まれると論じます。少なくとも、愛子天皇の誕生が皇位継承に関する国民の関心を飛躍的に高めることは確実だとし、皇族として生まれ育った愛子さまがその役割を自然に果たされている姿は、国民に大きな安心感を与えている点を強調しています。
【参考文献】
週刊ポスト2025年6月27日・7月4日号
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