かつて「万年4位」だった伊藤忠商事は、21世紀に純利益などで業界トップクラスに躍進。その強さの根源は、近江商人の「商人の心得」と独自の経営哲学にある。『伊藤忠 商人の心得』(野地秩嘉著)より、岡藤正広会長の「言い訳しない」姿勢に焦点を当てる。
伊藤忠商事の岡藤正広代表取締役会長CEOの肖像写真
岡藤会長による初期の経営改革
岡藤会長が2010年に社長に就任してまず行ったのは、役員会の回数を減らし、会議時間を短くし、会議資料を少なくすることだった。これは、限られた時間を最大限に活用し、本質的な議論に集中するための改革である。
「外部環境を言い訳にしない」という哲学
さらに、伊藤忠の企業文化を特徴づけるのが、「外部環境を言い訳にしない」という徹底した仕事哲学だ。会社には様々なルールや法令遵守が求められるが、目標達成できない理由を外部環境やルールのせいにする姿勢を、同社は厳しく戒める。
これはスポーツのルールと同様だ。サッカーで弱いチームが「10分だけ12人で」とは言えない。社内ルールも都合で変えられない。
岡藤会長は厳しく指摘する。「経験上、仕事ができない人間ほど社内ルールに文句を言い、会議で予算未達の理屈ばかり喋る。そんなのはムダだ。」
「誰でも戦う条件は同じなのだから。」つまり、成果を出すためには、与えられた条件の中で最善を尽くすことが求められるのだ。
伊藤忠商事の成功は、岡藤会長による会議改革に見られる効率化と、「外部環境を言い訳にしない」という厳格な仕事哲学に根差している。与えられた条件で最大限の成果を追求するこの姿勢こそが、同社の「商人の心得」として、現代の競争を勝ち抜く原動力となっている。
参考文献
『伊藤忠 商人の心得』(野地秩嘉 著 / 新潮新書)
Source link: https://news.yahoo.co.jp/articles/62174ce850456d4c48db3b8141079ebd339e4a12