警察庁は2025年6月17日、参議院内閣委員会において、2024年中に電動キックボードに関連する交通違反の検挙件数が4万1246件に上ったことを明らかにしました。この数値は、増加傾向にある電動キックボードの安全対策が喫緊の課題であることを浮き彫りにしています。
登録台数に対する異常な違反率
総務省のデータによると、2024年4月1日時点での特定小型原動機付自転車(電動キックボード)の登録台数は2万2321件です。これに対し、同年の交通違反検挙件数4万1246件は、登録台数の約1.8倍という極めて高い比率を示しています。
比較として、自転車の保有台数は約6760万台(2019年時点)ですが、2024年の交通違反検挙件数は5万1564件でした。単純な台数あたりの検挙率で見ると、電動キックボードの違反がいかに多いかが分かります。
深刻な人身事故の発生状況
人身事故についても、警察庁の発表では2024年中に電動キックボード関連の事故が338件発生しています。自転車関連事故は6万7531件でした。こちらも登録・保有台数に対する事故発生率で比較すると、電動キックボードは自転車の約15倍にもなり、その危険性が際立っています。
こうした実態に対し、立憲民主党の石垣のり子氏は、「電動キックボードの事故は多いと言わざるを得ない。交通違反は取り締まり強化の結果とも推察されるが、登録数の1.8倍ということは違反があり過ぎるとしか言いようがない」と厳しく批判しました。
国側の認識と今後の対策
坂井学国家公安委員長は、電動キックボードの現状について「法改正のときにはなかなか想定できなかった。今現在の状況を注視しているところである」と認識を示しました。
これまでの対策として、利用者にヘルメット着用を呼びかけていることや、交通ルールに関するテストを受けなければシェアリングサービスを利用できないようにしていることなどを説明しました。その上で坂井氏は、「さらなる充実・改善は必要だと思うので、事業者に働きかけを行っていきたい」と述べ、事業者との連携強化の意向を示しました。
繁華街を走行する電動キックボード利用者、安全運転意識の重要性
一方、石垣氏は「人の命を守ることを最優先に、(電動キックボードを)免許制にすることも視野に入れていただきたい」と、より抜本的な規制強化を訴えています。
問題視される悪質利用と交通マナー
電動キックボードに関しては、一部の悪質な利用者による一時不停止、スピード超過、信号無視など、交通違反の多さや交通マナーの悪さがたびたび指摘されています。最近では、電動キックボードのデッキ部分にスーツケースを乗せ、その上に座って運転するという危険な行為が目撃され、インターネット上で大きな批判を集めた事例もあります。
現在の電動キックボードのルール
改めて、現在の電動キックボードに関する主なルールを確認します。最高速度が自転車と同程度(特定小型原動機付自転車の場合)、定格出力が0.6キロワット以下といった一定の条件を満たしていれば、16歳以上の人ならば運転免許なしで運転可能です。
ただし、車両通行帯のある道路では車道を通行すること、原則として道路の左側に寄って通行すること、信号や道路標識に従うことなど、基本的な交通ルールは遵守しなければなりません。歩道を通行する際は、走行モードを切り替えて時速6km以下の速度しか出せないようにし、最高速度表示灯を点滅させる必要があります。飲酒運転や二人乗りなどの危険な行為は当然禁止されています。
また、電動キックボードにはナンバープレートを取り付けることや、自賠責保険(共済)への加入が運転者に義務付けられています。たとえコンパクトで手軽な乗り物であっても、周囲の車両や歩行者などに衝突すれば重大な事故につながる危険があるため、各利用者が高い安全運転意識を持つことが極めて重要です。
ヘルメット着用の「努力義務」と今後の課題
現在、電動キックボードのヘルメット着用は「努力義務」とされており、法的な強制力はありません。しかし、事故における運転者の損傷部位は頭部が19%、顔が24%というデータもあり、万が一の事故の際に頭部を守るヘルメットの重要性は明らかです。今後は、電動キックボードの関連事業者がヘルメットの販売や貸し出しなどをより積極的に行うなど、利用者への安全啓発と環境整備が求められています。
参照
今回のデータは、2025年6月17日の参議院内閣委員会における警察庁の答弁に基づいています。詳細については、警察庁発表または関連報道(Yahoo!ニュース/くるまのニュース掲載記事など)をご確認ください。