トヨタ自動車が世界の電気自動車(EV)市場での競争を加速させています。特に注目されるのが、中国市場で投入された新型EV「bZ3X」です。驚異的な低価格、約1万5000ドル(約220万円)からスタートしたこのモデルは、発売直後から大きな反響を呼び、5月にはフォルクスワーゲンや日産を抑え、外国ブランドEVの月間販売台数でトップに躍り出ました。これは、トヨタがEV分野で新たな段階に進んだことを示唆しています。
GACトヨタ共同開発、初の10万元レベル純粋EV SUV
トヨタは、中国の広州汽車集団(GAC Group)との合弁会社であるGACトヨタを通じて、この新型SUV「bZ3X」を3月6日に正式発表しました。本モデルは、トヨタとしては初めてとなる「10万元レベル(約220万円〜)」の価格帯で提供される純粋な電気SUVであり、多くの競合EVに対して価格面で大きなアドバンテージを持っています。
価格競争力の高い設定とそのインパクト
bZ3Xの開始価格は10万9800元(約1万4452ドル、日本円で約220万円)に設定されており、これは中国の海外ブランドEVセグメントにおける既存の価格常識を覆すものです。この戦略的な価格設定が、その後の市場での成功に大きく貢献しています。
5月販売台数で外国ブランドEVトップを獲得
本モデルは、5月単月で4344台の販売を記録しました。この数字は、同月のフォルクスワーゲンID.3(4217台)や日産N7セダン(3034台)を上回り、中国市場における外国ブランドの電気自動車としてトップセラーの地位を獲得しました。トップ5には、BMW i3とVW ID.4 CROZZもランクインしています。
好調な受注と迅速な納車状況
GACトヨタによると、bZ3Xは発売からわずか1時間で1万台以上の注文が殺到するという異例のスタートを切りました。GACトヨタの販売総責任者である彭宝林(Peng Baolin)氏によれば、4月末までにすでに1万台以上が納車済みであり、さらに1万2000台の注文が現在、出荷に向けて準備が進められています。
主要スペックとLiDAR搭載モデルの提供
bZ3Xのボディサイズは、全長4645mm、全幅1885mm、全高1625mmで、BYD Yuan Plus(Atto 3)とほぼ同等のサイズ感です。7種類のトリムモデルが用意されており、そのうち2種類にはLiDARシステムが搭載されています。トヨタは、この技術を合弁ブランドとして中国で提供する初のメーカーとなります。LiDAR搭載モデルの最高価格は14万9800元(約20500ドル、約310万円)です。搭載されるバッテリーパックは50.03kWhと67.92kWhの2種類があり、それぞれの航続距離はCLTCモードで430kmと610kmとなっています。
中国市場向けトヨタ新型EV「bZ3X」のフロントデザイン
トヨタの新型EV「bZ3X」は、その競争力のある価格設定と、GACグループとの連携による迅速な市場投入により、中国のEV市場で大きな成功を収めています。外国ブランドEVとして販売台数トップに立つなど、その初期の成果は目覚ましいものがあり、今後のトヨタのグローバルなEV戦略において重要な役割を果たすことが期待されます。