「プレッシャーで人は成長する」は本当か?→宇宙飛行士・野口聡一氏の答えが正論すぎて、ぐうの音も出なかった


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● プレッシャーは 本当に必要なのか?

 野口:燃え尽きの話で1つの課題となるのが、プレッシャーです。競争社会の中で、人はいいプレッシャーを感じて成長するものだという成長神話が僕たちの中にあって、それがずっと存在していると感じます。たとえば、わかりやすい例として少年野球や高校野球があります。

 あの苦しい練習を耐えたから勝利に意味があるとか、あのプレッシャーを切り抜けたからこそ成長できたのだとか、そういう価値観が根強く残っています。年長者の方は、今は大変かもしれないけれど、この難所を切り抜ければもう1段上に行けるから頑張れと声をかけます。僕自身、日本で育ってきた中でこのような場面を多く経験してきました。多くの人が経験することとしては、受験勉強もそうでしょう。

 「ここを乗り切れば」「この1年頑張れば」成長できる、あるいは会社であれば「このプロジェクトが終わるまでは」「課長になるまでは」「部長になるまでは」一心不乱に頑張ろうという風潮が根強く残っています。

 大江:そうですね。私たちの世代は、時にはプレッシャーも必要だと言われて育ってきた気がします。

 野口:プレッシャーにも、いいプレッシャーと悪いプレッシャーがあるという考え方があります。悪いプレッシャーだとつぶれてしまうけれど、いいプレッシャーは必要だと、とくに会社の経営者などはよくそうおっしゃいます。

 けれども、プレッシャーはやはりプレッシャーであり、つまりはストレスです。大なり小なりやはりストレスであって、ストレス耐性は人によって違う。

 だから、プレッシャーを与えることで成長するというのは、とくに昭和マインドでは当然の考えではあったかもしれませんが、それがそもそも本当に正しかったのかというのが、当事者研究(編集部注:自分で自分の経験・障害・病気などについて、客観的に見直す手法の研究のこと)を通じていろいろな形で感じている疑問です。

● 誰の心も簡単に 折れてしまう時代だから

 野口:今は皆、等しく心が折れる時代です。この人は強いから大丈夫というのはもうあり得なくて、誰の心も折れる時代になっている。もしかしたらずっと以前からそうだったのかもしれませんが、うまく気を紛らわすとか、違うところで力を発揮するとか、あるいは社会としてのいいサポート体制があったとか、そういうことでなんとかなっていたのではないでしょうか。

 けれども、今はみんなプレッシャーを感じると簡単に心が折れると思ったほうがいいぐらいです。プレッシャーに対するストレス耐性がどんどん落ちている状況で、成長戦略としてのプレッシャーがあること自体を見直さなくてはならないと感じています。



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