トヨタ ガイア:イプサムベースの高級ミニバンはなぜオデッセイに勝てなかったのか?

ユーザーの「欲しい」を的確に捉え、多くの成功モデルを生み出してきたトヨタ。しかし、時代の流れや強力な競合の前に、期待通りの成功を収められなかったモデルも存在します。今回取り上げるトヨタ ガイアも、そうした不完全燃焼に終わった車種の一つと言えるでしょう。イプサムをベースに開発されながら、当時の人気ミニバン、ホンダ オデッセイに対抗しようとしたガイアの軌跡を追います。

1998年5月に市場に投入されたガイアは、初代イプサムを土台とした3列シートを備えるミニバンです。イプサムと同じく5ナンバーサイズを維持しつつも、「新型高級ファミリービークル」としてより上級志向の位置づけでデビューしました。外観では、2代目アリストを思わせる特徴的な異形4灯ヘッドライトを採用。リア周りでは、テールランプをガーニッシュと一体化させた横一文字のデザインとし、リアナンバープレートをリアゲートからバンパーに移設するなど、イプサムとは一線を画すイメージが与えられました。

ルーフラインはイプサムより後方までフラットに延長され、室内空間の拡大が図られています。全長は90mm、全高は20mm拡大されており、見た目の堂々とした印象も強められました。エクステリアにはメッキパーツが多用され、インテリアにも上質な素材を用いることで高級感を演出。イプサムには設定されなかった2列目キャプテンシートの6人乗り仕様も用意され、差別化が図られています。ただし、パワートレインに関しては、イプサムと同じ2Lガソリンエンジンと2.2Lディーゼルエンジンが搭載されていました。

トヨタ ガイアのフロントビュー。特徴的な異形4灯ヘッドライトが見える。トヨタ ガイアのフロントビュー。特徴的な異形4灯ヘッドライトが見える。

イプサムをベースに高級路線を追求したガイアの明確な目的は、当時圧倒的な人気を誇っていた初代ホンダ オデッセイに対抗することでした。当時のトヨタのラインアップには、オデッセイのような余裕のある3ナンバーボディを持つヒンジドアタイプのミニバンが存在せず、このセグメントを求めるユーザーに応えるための苦肉の策として、イプサムをベースにガイアが誕生したと言われています。イプサムのデビューが1996年5月であるのに対し、ガイアの登場が2年遅れの1998年5月であったことからも、イプサムと同時期に計画されたというよりは、オデッセイの成功を受けて急遽開発がスタートしたと考えるのが自然でしょう。

しかし、やはり3ナンバーサイズの広いボディと、2.2L(後期型は2.3L)やV6 3Lといったよりパワフルなエンジンを搭載するオデッセイには、ガイアは太刀打ちできませんでした。この市場の現実を受け、2001年5月に登場した2代目イプサムは、ボディサイズを3ナンバー化し、2.4Lエンジンを搭載するなど、オデッセイに対抗できるスペックへと進化します。一方でガイアはフルモデルチェンジすることなく、5ナンバーサイズの3列シートミニバンとして2004年秋頃まで販売が続けられ、結果的にイプサムとの関係性が完全に逆転する形となりました。イプサムの高級版として誕生しながらも、市場での立ち位置を確立するのに苦労し、弟分となった2代目イプサムが先に進化したことは、ガイアの歴史を語る上で避けて通れない点です。