6月25日午後3時過ぎ、東京都内を走る東京メトロ南北線の車内において、40代の男性が木刀を振り回す事案が発生しました。男性は暴力行為処罰法違反の容疑で現行犯逮捕されましたが、幸い負傷者は出ませんでした。しかし、この電車に乗り合わせていた乗客からは、当時の生々しい状況や恐怖が語られています。この事件は、先日東大前駅で発生した東大生切りつけ事件に続き、再び公共交通機関内での安全への懸念を高めるものとなりました。
事件発生、異様な車内の様子
目撃した男性によると、南北線の上り(目黒方面行き)に乗車していたのは午後3時過ぎで、駒込駅や東大前駅からは多くの高校生が乗り込み、車内はほぼ満席の状態でした。男性は2号車に乗っていましたが、そこに棒状のものを持った男がいました。男は黒いTシャツに白いパンツ姿で、持っていた棒はバットより長く、長刀より短い、およそ1メートルほどの木刀でした。木刀は刃がないため銃刀法には触れませんが、正当な理由なく携帯すれば軽犯罪法に問われる可能性があります。
しばらくすると、その男は木刀を持ったまま車内でスクワットを始めました。その時、目撃した男性は男と目が合ってしまったといいます。すると、男はしゃがんだ体勢のまま木刀を振り回し始めました。この時になり、男性は男が持っているのが木刀だとようやく認識しました。車内でスクワットをし、さらに木刀を振り回すという行為は、周囲の乗客にとって明らかに異様な光景でした。
乗客の恐怖と逃走、男の追跡
目撃した男性は、男の異変を感じ取り、恐怖を覚えて2つ隣の4号車へ移動しました。鉄道車内での事件に遭遇した場合、その場から離れることは身の安全を守る上で重要な行動です。
しかし、少し時間が経つと、その男が男性のいる4号車にやってきました。2号車で男と目が合っていた男性は、「何か言いがかりをつけられるのではないか」「自分を追ってきたのではないか」という強い不安に襲われました。男の顔からは多量の汗が流れ落ち、その様子はそれまでとは明らかに異なっており、「殺されるかもしれない」とまで考えたといいます。周囲の乗客も、次第に男の異常な行動に気づき始めました。
男はその後、6号車へと移動していきました。
緊迫の後楽園駅到着と車内の混乱
男が木刀を振り回して暴れたのは、男が移動した先の6号車でした。男が暴れ始めると、6号車にいた乗客たちが、目撃した男性がいた4号車や他の車両へと避難するためになだれ込んできました。
ちょうどその頃、電車は後楽園駅に到着しました。駅のホームで男が駅員に取り押さえられる様子を捉えた動画がインターネット上で拡散されています。
後楽園駅ホームで木刀所持の男が駅員に取り押さえられる様子
しかし、車内では駅到着後も混乱が続いていたといいます。腰を抜かして座り込んでしまった高齢の男性や、泣き叫ぶ女子高校生も見られました。改札の外に出ると、転んでけがをした子供もいたとのこと。「こんなことになるなら後楽園に行きたいなんて言わなきゃよかった」と話す女子高校生の声もあり、多くの乗客が深い恐怖と動揺を経験したことがうかがえます。
木刀所持と法、繰り返される車内事件への懸念
今回の事件で男が使用した木刀は、前述の通り刃がないため銃刀法の対象外ですが、正当な理由なく公共の場所で携帯することは軽犯罪法に触れる可能性があります。公共交通機関での安全が改めて問われる中、このような凶器となりうる物品の取り扱いについても議論が必要かもしれません。
東京メトロ南北線では、5月にも東大前駅で東大生が刃物で切りつけられるという痛ましい事件が発生したばかりです。今回の木刀事案は幸い負傷者は出ませんでしたが、連続して発生する車内での事件は、通勤や通学で地下鉄を利用する多くの人々、特に学生や高齢者にとって大きな不安材料となっています。鉄道事業者や警察による更なる対策強化が求められています。