韓中関係悪化でも人気?国籍「隠す」ブランド戦略

最近、ソウル市内のMINISO(名創優品)店舗は週末の午前からキャラクター商品を求める人々で賑わっていた。ある女子大学生は「気になるものがたくさんあって、何を買うか迷っています」と笑った。同行していた友人は「最初はディズニーグッズショップかと思った。中国企業だとは全く知らなかった」と話した。同じ頃、中国の若者に人気のSNS「小紅書」や「抖音(TikTok)」には、韓国ブランドGENTLE MONSTER(ジェントルモンスター)の上海店を訪れた認証ショットが相次いで投稿されていた。独特の内装デザインや、フェンディ、メゾンマルジェラといった高級ブランドとのコラボアイテムが話題を呼んでいるという。訪問客は「スタイリッシュな空間」「見どころが多い」といったコメントとともに、サングラスをかけた自身の写真を投稿している。

韓中両国の若年層の間で相手国に対する嫌悪感が高まる中、国籍を前面に出さず、むしろ隠すような「迂回マーケティング」で現地に定着する企業が増えている。中国で「国潮(自国ブランド愛好ブーム)」により韓国製品が敬遠されがちな状況でも、韓国企業は製品力やブランドの魅力で中国消費者の心をつかんでいる。一方、中国企業もコストパフォーマンスだけでなく、技術力やデザイン競争力で韓国市場に浸透している。

国籍を「隠す」中国ブランドの韓国市場浸透

2013年に中国広州で設立された雑貨店MINISOは、2016年に韓国に進出し70店舗以上を展開したが、「中国版DAISO(ダイソー)」と呼ばれ、5年後に撤退した経緯がある。しかし、昨年12月にディズニー、マーベル、ハリーポッター、サンリオなどグローバルIP(知的財産権)を活用したキャラクターグッズショップとして韓国に再上陸した。現在、ソウル市内の大学路、弘大、江南に3店舗を構え、清州、大田、釜山など全国に追加で7店舗のオープンを計画している。MINISOコリア関係者は「今年、計10店舗で200億ウォン(約21億円)の売上を見込んでいる」と語る。

「ランダムフィギュア」で知られるPOP MART(ポップマート)の攻勢も著しい。アートトイ、フィギュア、キャラクター商品などを販売するPOP MARTは、ソウル弘大や明洞で店舗を展開している。

POP MARTコリアによると、昨年の韓国での売上・営業利益は前年比で4倍に増加した。中身が分からない「ブラインドボックス」形式での販売が、MZ世代の関心を強く引いた要因だ。LABUBU(ラブブ)、MOLLY(モリー)といった自社キャラクター商品に加え、コカコーラなどのグローバルブランドとコラボした限定版アイテムはプレミアム価格が付き、中古市場でも高値で取引されている。仁荷大学消費者学科のイ・ウンヒ名誉教授は、「MINISOやPOP MARTは人気キャラクターを前面に出し、中国のイメージを隠したことで、嫌中感情が強いMZ世代消費者からも人気を獲得できた」と分析する。

韓国ソウル江南店で人気キャラクターグッズを物色するMINISOの買い物客韓国ソウル江南店で人気キャラクターグッズを物色するMINISOの買い物客

「グローバルブランド」を強調する韓国企業の中国攻略

中国での「限韓令(韓流コンテンツ輸入制限)」や「国潮」ブームにより、一時は中国市場からの締め出しも危惧された韓国企業も、最近は「グローバルブランド」としてのイメージを強調している。韓国に滞在するある中国企業家は、「中国ではGENTLE MONSTERはビヨンセ、G-DRAGON(ジードラゴン)、BLACKPINK(ブラックピンク)のジェニーといったポップスターが愛用するサングラスとして有名だ。韓国ブランドだと知らない人も多い」と説明する。ファッションブランドのMLBやFilaも、中国ではそれぞれ米国ブランド、イタリアブランドとして認知されているという。特にFilaは、中国最大手のスポーツ衣料企業である安踏グループとの合弁会社を通じて製品を流通させた効果も大きい。

中国経済金融研究所の全炳瑞(チョン・ビョンソ)所長は、「かつて韓国製品だから人気があったアモーレパシフィックやLG生活健康などの事例とは正反対の現象だ」とし、「最近は韓国製であることよりも、ブランド競争力そのもので中国市場を攻略する必要がある」と提言する。

韓国市場防衛への示唆:製品力での正面勝負

中国発の静かな攻勢に対しても、同様の姿勢で備える必要があるという指摘もある。中国のロボット掃除機ブランド「Roborock(ロボロック)」は、韓国市場でサムスン電子やLGエレクトロニクスといった国内大手の製品と同等か、あるいは高価な価格帯でありながら、市場シェア40%台で首位を維持している。世宗大学経営学部のキム・テジョン教授は、「韓国企業が国内市場を守るためには、デザインや技術といった製品力で正面から勝負する以外に道はない」と述べた。

結論

韓中間の政治的・社会的な緊張が高まる中でも、両国の企業は相手国市場での成功を目指し、戦略を転換させている。かつては「韓国製であること」や「中国製であること」が消費行動に直接影響を与えていたが、現代、特にMZ世代の消費者は、国籍よりも製品自体の魅力、デザイン、技術力、そしてブランドが持つイメージやストーリーに価値を見出す傾向が強い。グローバルIPの活用や、スターマーケティング、ブラインドボックスのようなユニークな販売手法は、そうした新しい消費者の心をつかむ有効な手段となっている。このトレンドは、今後も両国間のビジネスにおいて重要な鍵となりそうだ。

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