大分県別府市で2022年、男子大学生2人が車にはねられ死傷した事件で、大分県警は、殺人と殺人未遂容疑で全国に指名手配されている八田與一容疑者(28)が、意図的に車を加速させ、被害者らが乗るバイクに追突したとみていることが捜査関係者への取材で明らかになった。追突時の速度は時速100キロ近くに達していたとみられ、県警は防犯カメラ映像の解析や走行実験などを重ね、八田容疑者に「確定的な殺意があった」ことを客観的に立証。事件発生から3年となるのを前に、今月2日に殺人と殺人未遂容疑での逮捕状を取得した。
別府ひき逃げ事件 八田容疑者の大破した軽乗用車と被害者のバイク(2023年撮影、大分県警提供)
事件の概要と被害状況
事件は2022年6月29日午後7時45分頃、別府市の県道交差点で発生した。県警によると、八田容疑者は軽乗用車を運転し、赤信号で停車中のバイク2台に追突。これにより、男子大学生1人(当時19歳)が死亡し、別の男子大学生1人(23歳)が負傷した。八田容疑者は、死亡した大学生に対する殺人容疑と、負傷した大学生に対する殺人未遂容疑などが持たれている。
容疑者の逃走と捜査状況
事件後、八田容疑者は現場から徒歩ではだしで逃走した。車内には財布やスマートフォン、靴などが残されたままだった。事件の2日後には、現場から約1.7キロ離れたヨットハーバーで容疑者が着用していたとみられる黒いTシャツが発見されたが、その後の足取りに関する有力な手がかりは得られておらず、現在も全国に指名手配されている状態が続いている。
別府ひき逃げ死亡事件 捜査の主な経緯と容疑者の動きを示す年表
殺意立証への決め手
県警は、現場周辺の防犯カメラ映像を広範囲に収集・分析し、現場に向かう八田容疑者の車両の走行状況を詳細に調べた。その結果、法定速度(時速40キロ)を大幅に超過し、時速100キロ近い速度で被害者のバイクに追突したことが判明。現場にブレーキ痕が一切なかったことから、八田容疑者が追突直前に減速する意思がなく、むしろ故意にアクセルを踏み込み、加速しながら直線道路を進行し、停車中のバイクに激しく衝突したとの見方を強めた。
殺人と殺人未遂容疑での逮捕状取得
これらの状況証拠に加え、実際の車両を使った詳細な走行実験などを複数回実施。客観的なデータに基づき、八田容疑者が事故ではなく、明確な殺意をもって追突したと結論付けた。捜査関係者によると、「これまでの様々な証拠と綿密な実験結果を積み重ねた末の判断」であり、これにより当初の道路交通法違反(ひき逃げ)に加え、より重い殺人と殺人未遂の容疑で逮捕状を取得するに至った。事件発生から3年が経過しようとする中、県警は容疑者の早期逮捕に向けた捜査を一層強化している。
事件は被害者参加制度の対象となっており、遺族や被害者からは容疑者への強い怒りと早期逮捕を願う声が上がっている。
参考資料:
大分県警捜査関係者への取材
現場の防犯カメラ映像解析結果
車両走行実験データ