「農政トライアングル」の力学:米価高騰と自民党・農協・農水省の関係

備蓄米の放出で安価なコメも市場に出回り始めたものの、依然として高値が続くコメ。その背景には、自民党、全国農業協同組合中央会(JA全中)を頂点とする農協組織、そして農林水産省から成る「農政トライアングル」が、価格急騰を事実上放置してきた側面がある。この強固な構造が、日本の農業政策、特に価格形成に大きな影響を与えている。

「農政トライアングル」の構造

農業予算の確保や農作物への補助金、灌漑施設整備などを求める農協組織と、選挙での後援会強化を目指す自民党国会議員。特に地方において、両者は長年にわたり「持ちつ持たれつ」の密接な関係を築いてきた。農協幹部は地元で名士であることが多く、自民党議員の後援会役員を務めるケースも珍しくない。実際に予算を執行する農林水産省が加わることで、自民党、農協、農水省という「農政トライアングル」は、戦後の日本の農政の基盤となってきたのである。

農協大会に集う「農林族」

こうした関係性は、JA全中が主催する食料・農業・地域政策推進全国大会などで顕著に表れる。2023年5月に開催された同大会では、自民党国会議員約120人の名前が次々と読み上げられた。農林族の重鎮である森山裕氏(当時選対委員長)は講演で、競争や効率化が優先された現状が農家や地方を疲弊させているとし、家族経営や小規模農家を生かす重要性を強調。「これを是正しなければならない」と訴えた。

2023年5月、JA全中大会で講演する自民党農林族の森山裕氏。適正な農産物価格形成の必要性を訴えた。2023年5月、JA全中大会で講演する自民党農林族の森山裕氏。適正な農産物価格形成の必要性を訴えた。

2024年5月の大会でも、江藤拓党総合農林政策調査会長(当時)が食料安全保障強化の必要性を力説。「有事の海上封鎖で日本人は飢えてしまう。今の農地面積では国民を養うのは難しい」と述べ、これを打破するための農業予算拡大を党として推進する姿勢を示した。これらの発言は、農協が求める政策や予算増額への期待に応える形であり、「農政トライアングル」の連携ぶりを示している。

まとめ

自民党、農協、農水省から成る「農政トライアングル」は、日本の戦後農業政策の根幹をなしてきた。農産物の価格形成や食料安全保障など広範な分野に影響力を持つこの構造は、現在の米価高騰の一因とも指摘される。農村部の政治基盤と農業振興の利害が一致する中で維持されており、日本の農業の将来を考える上で重要な論点となる。

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