日本全国に数多く存在するパチンコ店には、地域によって様々な特色が見られます。例えば、東京都内の多くの店舗では「10時開店、23時閉店」が一般的ですが、宮城県では「8時開店、24時閉店」といった具合に、営業時間が大きく異なるケースがあります。さらに、遊技によって得た出玉を特殊景品に交換する際の「換金率」も、都道府県ごとに違いが存在しています。長年にわたりパチンコ・パチスロ専門誌のライターとして活動してきた濱マモル氏が、こうした地域性が生まれる背景にある理由について詳しく解説します。
日本のパチンコ店の外観イメージ。地域による営業時間や換金率の違いを示す象徴的な写真。
営業時間の地域差とその理由
かつて、パチンコ店の閉店時間には『蛍の光』のBGMが流れるのが定番でした。筆者も、時には遊技に夢中になり、閉店間際まで粘ったり、連チャンを取り切る前に遊技を終了させられたりといった経験があります。パチンコ店には必ず営業時間というものが存在します。関東エリアを見てみると、神奈川県、茨城県、栃木県では主に9時開店、東京都、千葉県、埼玉県、群馬県では主に10時開店が多く、いずれも閉店時間は23時と定められています。ただし、現在の法律では23時の時点で店内に客がいることは認められていないため、多くの店舗では閉店時間の10分から30分前を「遊技終了時間」として設定しています。これにより、関東地方のプレイヤーは最長でも22時50分頃までしか遊ぶことができないのが現状です。23時を過ぎてから新たにコインを投入する、といった行為は認められていません。しかし、一部の地域では、23時以降も遊技可能なパチンコ店が存在します。
パチンコ店の営業時間を規定しているのは、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(通称:風営法)と、各都道府県が定める条例です。2016年の風営法改正により、パチンコ店は「4号営業」に分類されています。風営法では、「深夜0時から午前6時までの営業を禁止する」と基本的な枠組みが規定されています。一方で、各都道府県の条例は地域の実情に合わせて定められており、一律ではありません。東京都や大阪府のような大都市では、騒音対策や治安維持などを理由に、営業時間を「10時から23時まで」と比較的短く設定しています。これに対し、宮城県では「8時から24時」、青森県では「8時30分から23時」、沖縄県では「9時から24時」といったように、異なる時間が設定されています(地域によってはさらに特例が適用される場合もあります)。このように、条例で定められた範囲内であれば、各パチンコ店は自由に営業時間を決めることができます。このため、宮城県や沖縄県など、条例で深夜までの営業が許可されている地域には、23時以降も遊技可能な店舗が存在するのです。
特例で深夜営業も可能に
さらに、特定の期間には特別な特例が設けられる場合があります。例えば、三重県では大みそかから元旦にかけて、最大39時間の連続営業(オールナイト営業)が認められています。これは、伊勢神宮への初詣客の利便性を高めることや、地域の活性化に繋がるという側面を考慮した措置だと言われています。京都や札幌でも同様の特例が見られます。日本三大祭りの一つである祇園祭の期間中や、世界三大雪まつりの一つであるさっぽろ雪まつりの期間中は、同様の理由から深夜までの営業が許可されており、こうした機会を楽しみにしているファンも多いようです。
長時間営業の落とし穴と遊技の注意点
ただし、営業時間が長くなることが、必ずしも「勝ちやすくなる」ことを意味するわけではありません。筆者自身も過去に深夜営業のパチンコ店に入店した経験がありますが、景気の良いボーナス回数を記録しているパチスロ台を見つけ、喜び勇んで座ってみたところ、よくよくデータを確認すると、ボーナス合算確率は設定1に近い数値でした。これは単にその台の総ゲーム数が多かっただけであり、このような勘違いは往々にして起こり得ます。特別なイベントとして割り切って楽しむのであれば問題ありませんが、遊技する際は、台の状態やデータ解析をしっかりと行い、その良し悪しを見極めることが重要だと、ここで改めて注意を喚起しておきます。
換金率にも地域差がある理由
パチンコ店の「換金率」、つまり遊技で獲得した出玉を特殊景品に交換し、それを買い取ってもらう際のレートも、都道府県によって異なります。これは、各都道府県のホール団体が独自に定めているためです。かつて一般的だった「等価交換」(出玉と景品の価値が等しい状態)は、大阪府では全国に先駆けて2011年から、東京都でも2015年11月頃から原則として廃止されました。「一物一価」(同じものは同じ価格で交換されるべき)の考え方や、「クギ曲げ問題」(違法な調整)への対策など、様々な理由が挙げられていますが、個人的にはやはり「射幸性」(ギャンブル性の高さ)の抑制が大きなポイントだと感じています。
換金率が高くなれば、それだけ短時間で大きな利益を得られる可能性が高まり、必然的に射幸性も高まります。そのため、高い換金率が設定されているエリアでは、比較的出玉が抑えられる傾向にあるのはある意味当然の結果かもしれません。多くのパチンコ店は自店の正確な換金率を公表していませんが、都道府県境にお住まいの方々は、こうした地域による換金率の違いも考慮に入れて、遊技する店舗を選ぶのも一つの賢い方法と言えるでしょう。