座間9人殺害事件の白石隆浩死刑囚(34)の刑が6月27日、執行されました。彼は2017年に神奈川県座間市のアパートで、SNSで知り合った15歳から26歳の男女9人を殺害し、遺体を切断して遺棄したほか、女性8人には性的暴行も加えていました。この凶悪な事件で死刑が確定した白石死刑囚ですが、執行のわずか3日前、かつての主任弁護人との面会で、事件や自身の境遇とはかけ離れた意外な言葉を口にしていたことが明らかになりました。
弁護士が明かす執行直前の様子と交わされた会話
白石死刑囚の元主任弁護人である大森顕氏(54)は、今回の刑執行について「大変なショック」だったと重い口を開きました。大森氏が白石死刑囚と最後に面会したのは、執行の3日前にあたる先月24日の午後3時半、場所は東京拘置所でした。これは全くの偶然だったといいます。
「私の顔を見て、白石さんは喜んでいるように見えました。対面した彼はスポーツ刈りに近い短髪に眼鏡をかけ、服装は上下のスウェット姿でした。席に着くなり、“先生は米を食えてるんですか?”と尋ねてきたので驚きました」と大森氏は語りました。東京拘置所の独居房でラジオを聞ける環境にあった白石死刑囚は、最近の米価高騰のニュースを聞き、大森氏を気遣って尋ねたようです。大森氏が「食べていますよ」と答えると、安心した様子を見せました。逆に大森氏が近況を尋ねると、「元気です」と答え、実際、体形も変わらず健康そうだったといいます。
座間9人殺害事件の白石隆浩死刑囚。刑執行直前の面会で弁護士が見た姿。
拘置所での読書生活と「感動した2冊」
面会の中で、白石死刑囚はさらに意外な話を持ち出しました。「最近、読んだ本が2冊あって、すごい感動したんですよね」と語り始めたのです。いずれも日本人作家が書いたベストセラーの文庫本で、ジャンルはヒューマンドラマ系小説でした。具体的な書名については、私的な会話であるため大森氏は明かしませんでした。
白石死刑囚は拘置所内でよく本を読んでいたといいます。2017年の事件発覚以降、2021年に死刑が確定してからも、大森氏は半年に一度の頻度で面会を続けていました。その中で、白石死刑囚から「本を買いたいので、できればお金を差し入れてくれないか」と相談されたことがあったそうです。そこで大森氏は、面会のたびに少額ながら本を購入するためのお金を差し入れていたといいます。彼は文芸からエンタメまで幅広く読んでいましたが、大森氏が一度差し入れた米作家シドニー・シェルダンの本について、「面白かった」と感想を伝えてきたこともありました。
死刑執行という極限状況が迫る中、自身の裁判や事件ではなく、弁護人の生活や読書といった日常的な話題に言及した白石死刑囚の言葉は、彼と接した弁護士にとって非常に印象深いものだったようです。