シンガー・ソングライターの七尾旅人氏(45)が7日までに自身のX(旧ツイッター)を更新し、イラン出身のタレント、サヘル・ローズ氏(39)がテレビ番組での発言を釈明したことについて私見を述べ、現在の日本社会の状況に警鐘を鳴らした。
事の発端は、サヘル・ローズ氏が6日放送のTBS系「サンデーモーニング」に生出演した際の発言だった。参院選(20日投開票)が政権選択選挙であるとする特集の中で、外国人を取り巻く政策が議論の対象となっている状況に触れ、「自分たちに選挙権がない、発言できる権利がない(外国籍の)人たちを、そこで(話題に)あげて、攻撃するのは違うんじゃないかな、というのは、すごく心苦しく、今見ています」と自身の思いを表明した。
その後、サヘル・ローズ氏は自身のXアカウントで、発言の意図について釈明を行った。「私は『選挙権をください』とは言っていません。ただ、まっとうに働き、納税し、地域の一員として生きている外国籍の人々が、政治的な言説の中でひとくくりに語られ、『まるで全員が悪者のように扱われている』ことに、悲しみと不安を覚えました」と投稿し、誤解がないよう努めた。
テレビ番組出演などで知られるタレント、サヘル・ローズ氏の写真
七尾旅人氏はこのサヘル・ローズ氏の投稿を引用する形で、現在の日本社会のあり方を批判した。「何も悪くないサヘルローズさんがバッシングを浴び、下記のような言葉を引き出されるところまで追い込まれる今の日本社会、本当に危うい」と述べ、サヘル・ローズ氏が不当な攻撃を受けている現状への危機感をあらわにした。
さらに、バッシングの中にみられる「悪いのはあなたみたいなちゃんとした外国人じゃなく、不逞外国人です」といった意見に対しても強く反論。「不逞だの不法滞在だのといった乱暴な言葉が一人歩きするのは大変危険で、在留資格を得られず苦しんでいる人々の中には悲運としか言いようのない境遇の方がたくさんいる」と指摘し、安易なレッキング(特定のレッテル貼り)の危険性を訴えた。
また、日本の外国人労働者を取り巻く歴史的な問題にも言及した。「日本の難民認定率の異常な低さは言うまでもないが、国策として自ら呼び寄せた移民労働者まで奴隷のように扱い、またバブル期以前から過酷な3K労働の現場等で、不法就労をあえて黙認してきた時代も長い」と述べ、都合の良い時だけ外国人を受け入れ、困難な状況に追い込んできた日本の姿勢を批判した。
このような外国人への冷淡な態度は、結局のところ自国民への冷たさにも繋がると七尾氏は推測。「劣悪な環境で散々利用しておいて、今度は、長い不況下で苦しみ疎外感とルサンチマンを抱える大衆の憎悪を浴びせかけるためのスケープゴートに変えている」と、経済的な閉塞感から生じる不満の矛先が外国人へと向けられている現状を問題視した。そして、「それを扇動しているのは、希釈したトランプのような排外主義的ポピュリストたち。『日本人ファースト』のような言葉に騙されてはならない」と強く警告し、排外主義的なポピュリズムへの警戒を呼びかけた。
全体として、七尾旅人氏はサヘル・ローズ氏へのバッシングをきっかけに、日本の外国人に対する扱い方、歴史的な背景、そして現在の社会に広がる排外主義的な傾向とその扇動者について深い懸念を示し、社会全体への警鐘を鳴らす形となった。
Source: https://news.yahoo.co.jp/articles/90d5f535ba603c210d13bee6454655bd97278bd3