ドナルド・トランプ米大統領は29日、性犯罪者のジェフリー・エプスティーン元被告(故人)がフロリダ州の私邸兼リゾート施設マール・ア・ラーゴのビーチクラブのスパで働いていた若い女性たちを「盗んだ」ことが、二人の不仲につながったと明かしました。これはトランプ氏がエプスティーン元被告との関係について語った新たな説明であり、未成年女性への性的虐待や人身売買を巡る同元被告の事件が再び注目を集める中で行われました。
トランプ氏は、英スコットランドからの帰路、大統領専用機内で記者団の取材に応じ、エプスティーン元被告に関する一連の質問に答えました。この発言は、長年にわたる両者の関係や、エプスティーン元被告が絡む数々の疑惑に新たな光を当てるものです。
関係悪化の新たな説明:マール・ア・ラーゴの「スパの女性」
トランプ氏は前日、「彼(エプスティーン元被告)が私のために働いていた人たちを盗んだ」と発言していましたが、記者からそれらの従業員が若い女性だったかと問われると、「答えはイエスだ」と即答しました。さらに、自身の経営するスパから引き抜かれて雇われたと説明しています。
そのうちの一人として、トランプ氏はヴァージニア・ジュフリー氏の名前を挙げました。ジュフリー氏は以前、16歳だった2000年夏にマール・ア・ラーゴで働き始めたと語っています。トランプ氏は、「彼(エプスティーン元被告)は人々を連れ去った。私は『もうやめろ』、彼女たちは私のために働いているんだと言った。(中略)それ以外にも、彼は他に何人かを連れ去った」と述べ、「それをやった時点で、彼は終わりだった」と、絶縁の決定的な理由を強調しました。
トランプ大統領と故エプスタイン元被告が1997年に並んで写る写真、マール・ア・ラーゴでの二人の関係性を示す
ヴァージニア・ジュフリー氏の告発と悲劇
2019年に公開された裁判文書によると、ジュフリー氏はマール・ア・ラーゴのスパで働いていた際、エプスティーン元被告にマッサージをするよう、元被告と行動を共にしていたギレイン・マックスウェル受刑者に勧められたとされています。マックスウェル受刑者は、エプスティーン元被告による少女虐待を手助けした罪などで有罪となり、禁錮20年の刑に服しています。
ジュフリー氏は後年、英アンドリュー王子とエプスティーン元被告による性的虐待を告発しました。両者はこの告発を否定しています。ジュフリー氏は今年4月、オーストラリアで自殺しており、その死は多くの議論を呼びました。
トランプ氏の説明と過去の声明の整合性
トランプ氏のこの日の記者団に対する発言は、エプスティーン元被告との関係がどのように終わったかに関する新たな説明となりました。ホワイトハウスは先週、トランプ氏がエプスティーン元被告を「気味が悪い」という理由で、マール・ア・ラーゴのクラブから追い出したとしていました。
この二つの説明に食い違いがあるのではないかと問われると、トランプ氏は、「いやいや、同じようなことだ」と答え、両者の説明に本質的な違いはないとの見解を示しました。トランプ氏とエプスティーン元被告は、10年以上の交友期間を経て、2000年代初頭に仲たがいしたとされています。
「顧客リスト」とトランプ氏への圧力
エプスティーン元被告をめぐっては、「顧客リスト」の存在を信じる人々から、関連ファイルを公表するよう、トランプ氏側への圧力が高まっています。トランプ氏は昨年の大統領選挙で、元被告に関するファイルを公開すると約束していました。しかし、司法省と連邦捜査局(FBI)は今月、著名人らの犯罪への関与を示すようなリストは存在しないと結論づけています。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは先週、パム・ボンディ司法長官がトランプ氏への5月のブリーフィングで、エプスティーン元被告に関連する司法省の文書の中に、数百人に交じってトランプ氏の名前も出てくると同氏に伝えたと報じました。ただし、そうした文書に名前が記載されていることは、不正行為の直接的な証拠にはならないとされています。
トランプ氏への過去の性的暴行疑惑
トランプ氏とエプスティーン元被告は、交友のあった期間、パーティーで一緒にいるところがたびたび目撃されていました。そうしたパーティーに出席していた少なくとも2人の女性が、のちにトランプ氏に性的暴行を受けたと訴え出ています。
米紙ニューヨーク・タイムズによると、一人はジル・ハース氏で、1997年の訴訟では、エプスティーン元被告も出席していた若い女性向けのマール・ア・ラーゴでのイベントで、トランプ氏に無理やりキスされ、体をなでられたと主張しました。トランプ氏はこの主張を否定し、訴えは取り下げられました。
もう一人はモデルのステイシー・ウィリアムズ氏で、エプスティーン元被告に連れられてニューヨーク・マンハッタンのトランプ・タワーにトランプ氏を表敬した際、同氏に体を触られたと訴えました。これについても、トランプ氏は否定しています。
エプスタイン元被告とのその他の接点
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは先週、トランプ氏が2003年のエプスティーン元被告の誕生日に「下品な」手紙を送ったと報じました。そこには、「謎は年を取らない」、「友人とは素晴らしいものだ。誕生日おめでとう——毎日が新たな素晴らしい秘密でありますように」などと書かれていたとされます。トランプ氏はこの記事を「フェイク」と断じ、名誉毀損で同紙の親会社などを訴えました。
また、トランプ氏とエプスティーン元被告は2004年、差し押さえになっていたフロリダ州パームビーチの海沿いの人気物件をめぐり対立したと報じられています。最終的にトランプ氏が競り勝ち、この物件を手に入れました。
ギレイン・マックスウェル受刑者の動向と恩赦問題
一方、ギレイン・マックスウェル受刑者に対しては、連邦議会下院の監視委員会が先週、8月11日に委員会で証言するよう召喚状を送りました。彼女の弁護団は、トランプ大統領に恩赦を求め、もし「恩赦を受けられるのであれば、彼女はオープンに正直に証言することを望むだろう」との意向を示しています。
しかし、同委員会のジェイムズ・コマー委員長の広報担当は29日、「彼女の証言に対して議会免責特権を与えることは検討しない」と述べました。コマー氏は先週、米CNNで、「子どもたちを性的に売買していた可能性のある人物に免責特権を与えたいと考える共和党議員は多くない」と話しており、恩赦の可能性は低いと見られています。トランプ氏は先週、マックスウェル受刑者に恩赦を与えることについて聞かれると、自分の権限としてできるが、「考えていない」と記者団に語っています。
結論
トランプ氏の最新の証言は、ジェフリー・エプスティーン元被告との複雑な関係に新たな側面をもたらしました。マール・ア・ラーゴのスパから若い女性が「盗まれた」という説明は、これまでの「気味が悪い」という理由とは異なる、より具体的な絶縁の動機を示唆しています。この事件は、関係者の広範なネットワークと、過去の疑惑が再浮上する中で、依然として国際社会の大きな関心事となっています。今後、ギレイン・マックスウェル受刑者の証言や関連する司法文書の公開など、さらなる展開が注視されるでしょう。
参照元
- (c) BBC News
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