韓国で実施された最新の世論調査によると、日本に対する印象を「よい」と答えた人の割合が6割を超え、注目される結果となった。これは、2013年に調査が開始されて以来初めて、「よい」が「よくない」を大幅に上回る結果であり、韓国社会の対外認識の変化を示す重要な兆候と言える。
世論調査に見る日本への印象の変化
韓国の民間シンクタンク「東アジア研究院」が2013年から継続している対外認識に関する世論調査において、今年6月に実施された最新の調査で、日本に対する印象が「よい」と回答した人が63.3%に達し、「よくない」と答えた30.6%を大きく上回った。これは、調査開始以来初めて「よい」が過半数を超え、「よくない」を上回る結果となった。
調査開始時の2013年には、「よい」が12.2%、「よくない」が76.6%という厳しい状況だった。その後緩やかな改善傾向が見られたものの、徴用工問題を巡る日韓対立が激化した影響もあり、2020年には再び13年と同水準まで悪化した。日本製品不買運動などもこの時期に展開されたことが背景にあると考えられる。その後は再び改善基調に戻り、昨年の調査では「よい」「よくない」が拮抗していたが、今回の調査で一気に「よい」の割合が上昇した形だ。
ちょうど同じ時期には、朝日新聞・東亜日報、読売新聞・韓国日報といったメディアによる日韓共同世論調査も実施されており、これらの結果も合わせて韓国社会の意識変化を読み解く手がかりとなる。
好感度向上の背景にある複合的要因
日本への印象という漠然とした質問は、政治状況だけでなく文化や旅行など回答者が何を連想するかで結果が変わりやすい側面がある。長らく対立が続いた日韓関係は、2022年に尹錫悦政権が発足して以降、関係改善へと大きく舵を切った。
これと並行して、円安を背景とした日本旅行の人気や、日本の食文化・ポップカルチャーへの親しみやすさなど、政治とは別の次元でも日本はより身近な存在となっていた。
これまで政治的対立が強調される時期には、日本への好意を率直に示しにくい雰囲気もあったが、関係改善の動きがこの雰囲気を取り払い、潜在的に存在していた日本への好感が今回の調査で表面化したと考えられる。調査開始当初の「よい」の割合の低さは、筆者の実感としても日常感覚とは乖離があり、今回の結果は広範な日常生活での感覚が強く表れたと言える。
日韓首脳会談を終え車に乗り込む尹錫悦大統領と岸田文雄首相(2023年3月)
今回の世論調査結果は、韓国における日本への印象が、過去13年間で最も肯定的な水準に達したことを明確に示している。これは、尹錫悦政権下の政治的関係改善と、円安や文化交流など多岐にわたる社会・経済的な側面からの影響が複合的に作用した結果と分析される。韓国民間の意識に現れたこの変化は、今後の日韓両国関係を展望する上で重要な示唆を与える。
参考文献:
- 東アジア研究院 世論調査報告
- 朝日新聞・東亜日報 日韓共同世論調査
- 読売新聞・韓国日報 日韓共同世論調査