海上自衛隊、電磁レールガン海上試射へ:試験艦「あすか」搭載姿公開

海上自衛隊の試験艦「あすか」(ASE6102)に電磁レールガンが搭載された姿が公開され、大きな注目を集めている。護衛艦スタイルの実験専用艦である「あすか」の艦尾甲板に設置されたこの砲塔型レールガンは、今年4月の初公開時にはカバーで覆われていたが、今回はその全容が現れた形だ。日本の専門写真家によって撮影され、SNS(旧X)を通じて拡散された写真が関心を集めている。現在、この兵器は艦上で試験運用段階にあり、7月25日まで海上での実射試験が予定されている。

レールガン開発の現状と背景

米軍事専門メディア「ウォー・ゾーン」は7月1日、この装備が防衛省傘下の防衛装備庁(ATLA)が数年間、地上及び海上で行ってきた試作レールガン実験機とほぼ同一であると報じた。同メディアは、米国が17年間の開発の後、技術的課題や経済性を理由に2021年末に中止したのに対し、日本の地道な開発が続いている点を対照的かつ注目すべきだと評価している。

電磁レールガンは、火薬ではなく電磁気力を用いて金属製の弾丸を超高速(マッハ6以上)で発射する革新的な兵器システムだ。数メガジュール(MJ)の電気エネルギーを瞬時に放出し、レール間で弾丸を加速させる。このプロセスでは莫大な熱が発生するため、強力な冷却システムが不可欠となる。公開された写真からも、コンテナ型の発電機など付属装備全体が大型化する傾向が見て取れる。こうした大型の付属装置を必要とするため、既存駆逐艦への搭載は空間、電力、冷却面で大きな制約があり、広大な甲板を持つ試験艦「あすか」が理想的な試験プラットフォームとなっている。

海上自衛隊の試験艦あすかに搭載された電磁レールガン砲塔海上自衛隊の試験艦あすかに搭載された電磁レールガン砲塔

レールガンの能力と実用化への課題

防衛装備庁は2023年の実験に基づき、このレールガンの弾速がマッハ6.5(秒速約2230メートル)、使用エネルギーは5MJであると発表している。しかし、超高速での発射は砲身の摩耗を著しく進行させ、寿命が短いという大きな課題がある。防衛装備庁は現在、120発の発射に耐えられる砲身の開発を目標としている。試験艦「あすか」は6月9日に横須賀港を出港し、7月25日まで海上で実射撃試験を行う予定だ。

広がる電磁レールガンの潜在能力と展望

レールガンは金属弾を超高速で精密に発射することで、海上の標的攻撃はもちろん、超音速ミサイルや巡航ミサイルの迎撃、さらにはドローンの撃墜といった多様な用途に活用できる潜在能力を秘めている。既存の迎撃ミサイルと比較して発射コストが格段に低く、使用する超高速弾丸は従来の砲弾より小型(日本の場合約40ミリ)であるため、大量備蓄も容易である点が利点として挙げられる。かつて米国も2005年から2021年にかけて5億ドル以上を投じて開発を進めたが中止しており、日米共に、爆発物を含まない純粋な金属弾を超高速で目標物に貫通させる運動エネルギー弾としてのレールガン開発を目指していた。

まとめ

海上自衛隊による電磁レールガンの海上実射試験開始は、日本の防衛技術開発における重要な一歩を示すものだ。試験艦「あすか」をプラットフォームとした今回の試みが成功すれば、将来的に日本の海上防衛能力を大きく向上させる可能性を秘めている。砲身寿命などの課題は残るものの、その潜在的な迎撃能力やコスト効率の高さから、今後の開発動向が注視される。