7月8日、自民党の鶴保庸介参議院予算委員長(58)が和歌山市で行った応援演説中の発言が、能登半島地震の被災地への配慮を欠くとして大きな波紋を広げている。鶴保氏は、参院選立候補者を応援する集会で、自身が推進する「二拠点居住」に触れる文脈で、「運の良いことに能登で地震があったでしょ。緊急避難的だが金沢にいても輪島の住民票がとれるようになっていって、『やればできるじゃないか』という話をした」と述べた。地震発生から1年半が経過し、依然として多くの被災者が避難生活を送る中で、この発言に対してSNS上やネットニュースのコメント欄では批判が殺到。立憲民主党の野田佳彦代表も「失言というレベルじゃない」と強く非難した。
発言内容とその背景
鶴保委員長の発言は、「二拠点居住」というライフスタイルを普及させるための事例として能登半島地震後の状況を挙げたものである。しかし、「運の良いことに能登で地震があった」という表現が、災害で甚大な被害を受けた被災者の心情を全く顧みないものとして、深刻な問題提起となった。金沢での避難生活を送りながら輪島市の住民票を維持できるようになった現状を「やればできる」と例示したが、その導入部分があまりにも不適切だった。
広がる批判と政治的反応
鶴保氏の発言は瞬く間に拡散し、インターネット上で厳しい批判の的となった。「被災者の気持ちを踏みにじるものだ」「政治家としてあるまじき発言」といった非難の声が多く見られた。野党からも批判の声が上がり、立憲民主党の野田佳彦代表は、その言葉の選択のひどさを指摘し、「失言」という言葉では済まされない問題だと糾弾した。
鶴保氏の釈明と今後の対応
事態を重く見た鶴保氏は、翌9日に和歌山県庁で記者会見を開き、発言について陳謝し、正式に撤回した。「言葉足らずで被災地への配慮が足りなかった」と述べ、反省の意を示したが、現時点での議員辞職や離党については考えていないとの意向を明らかにした。発言の真意としては、「震災を運がいいなどと思うはずもない」と釈明している。
鶴保庸介参院予算委員長、能登半島地震に関する自身の発言について説明する様子
被災地・輪島市の受け止め
特に被害が大きかった自治体の一つである輪島市は、鶴保氏の発言をどのように受け止めているのだろうか。輪島市に見解を求めたところ、復興推進に携わる企画振興部の担当者が「個人的な意見」として見解を述べた。
輪島市担当者の「個人的な意見」
担当者は、「市の代表としてコメントできる立場ではない」と断った上で、市民としての個人的な感想を語った。正直なところ、鶴保氏が自身の主張の例として能登や輪島に言及する必要は全くなかったと感じているという。発言は、うまく例を挙げようとした結果、言葉の選択で誤解を招いたのではないかとの見方を示した。
発言の真意と推測される背景
「二拠点居住」との関連については、輪島では地震の影響で家族が離れ離れになっているケースが少なくない現状を説明。夫は仕事で輪島に残り、子どもを含む他の家族は教育などのために金沢で避難生活を送るといった実態があり、鶴保氏はそうした状況を踏まえて「二拠点居住」の必要性や可能性を示唆しようとしたのだろうと推測した。
市民としての複雑な心情
担当者は、実際に被災地に住む身として、輪島や能登の深刻な被害を悪く言う人はほとんどおらず、多くの人々は大変だろうと同情していると感じていると述べた。立場のある鶴保氏の発言がこのように問題視されるのは、言葉の使い方が適切ではなかったためであり、あの発言だけを切り取ると批判されても仕方ない面があるとしつつも、「あの通りに思っているかといえば、日本人なら多分そうは思ってないと思いますよ」と、鶴保氏の本心は別にあると信じたい複雑な心情を語った。
結論
鶴保参議院予算委員長による能登半島地震に関する不適切発言は、被災地のデリケートな状況を踏まえると看過できない問題であり、厳しい批判を招いた。本人は謝罪・撤回したものの、議員辞職や離党は否定している。被災地である輪島市の担当者からは、個人的な意見としてではあるが、発言の背景にある可能性や、多くの人々の被災地への同情的な気持ち、そして言葉の選択の失敗であったことへの示唆が語られた。今回の件は、政治家の言葉が持つ重みと、被災者感情への深い配慮が不可欠であることを改めて浮き彫りにした。
参考文献:
https://news.yahoo.co.jp/articles/484762d1f93134ebcaafe895cce06c5247faf032