ロシアがウクライナに対し過去最大規模の空襲を敢行したことを受け、米国、北大西洋条約機構(NATO)、欧州主要国が一斉にウクライナ支援の強化に乗り出した。
トランプ氏の「重大声明」と武器支援の言及
トランプ米大統領は10日(現地時間)、NBCニュースの電話インタビューに応じ、「ロシアに失望した。今後2、3週間にどんなことが起こるか見守る」と述べ、さらに「月曜日(14日)にロシアに関して重大声明を出すことになるだろう」と予告した。ただし、この重大声明の具体的な内容については明らかにしなかった。
トランプ大統領はこのインタビューの中で、米国産武器のウクライナ支援についても言及した。「我々はNATOに武器を送っており、NATOはその武器に100%の費用を支払っている。したがって我々が送る武器はNATOに渡り、NATOはその武器を(ウクライナに)与えようとする。NATOが武器費用を出している」と説明した。トランプ大統領は、こうした合意が先月のNATO首脳会議でなされたと強調し、「我々はNATOに武器を送り、NATOはその武器に対する全体の費用を支払う」と改めて述べた。
ロシアのウクライナ侵攻に関する会談で握手するトランプ米大統領とマルク・ルッテNATO事務総長
NATO事務総長、ウクライナ支援協力と同盟国への要請
一方、マルク・ルッテNATO事務総長はこの日、ソーシャルメディア上で「トランプ大統領と電話で会談し、ウクライナが必要な支援を受けられるよう同盟国と協力中だ」と明らかにした。さらに、「ロシアの民間人を対象にした空襲は嘆かわしい」と述べ、各国首脳に対してウクライナに対する防空システムおよび弾薬支援の拡大を促したことも伝えた。
ロシアによる過去最大規模の空襲
こうした国際的な支援強化の動きの背景には、ロシアによる激しい攻撃がある。ロシアは8日と9日、戦争勃発以降で最大規模となる741のミサイルとドローン(無人機)を投入し、ウクライナ全土に猛攻を浴びせた。前日にもウクライナの首都キーウを含む全域に対し、ミサイル18発とドローン約400機による攻撃を行っている。
米国の姿勢転換と国内での懸念
相次ぐ大規模空襲を受けて、トランプ政権も強硬姿勢に転じた様子が見られる。空襲の直後、トランプ大統領は「ウクライナが非常に激しく攻撃を受けている」として、パトリオットミサイルシステムの追加支援を検討中であることを明らかにしていた。また、ルビオ米国務長官は9日にマレーシアで開催されたASEAN外相会議の場でロシアのラブロフ外相と面会し、「プーチン大統領の柔軟性不足にトランプ大統領が失望した」とのメッセージを伝えている。
米国内では、自国本土の防御強化を求める声も高まっている。ニューヨーク・タイムズ紙は、近年のロシアやイランによるドローンの威力が確認されたことで、米国本土の防御も非常事態にあると指摘している。これは、ウクライナや中東の戦場で各国軍がドローンを深く浸透させ、軍事施設を打撃した成功事例が、米国の安全保障政策に強い警告を与えているためだと報じられている。
戦後ウクライナの「安全保障軍」創設計画
10日には、英国とフランスの首脳が英ロンドンで「有志連合」会議を開催し、ウクライナの戦後復興に向けた「安全保障軍」の創設計画を発表した。発表によると、英政府は仏パリに中将クラスの司令官を置く多国籍作戦本部を、ウクライナの首都キーウには少将クラスのいる調整支部を設置する予定だ。ただし、1年後には本部をロンドンに再び移す方針とされている。この連合軍は、ウクライナ地上軍の再建、防空、黒海海上アクセス支援を担当することになっているが、兵力をウクライナ国内に派兵するかどうかは現時点では明らかにされていない。
ドイツdpa通信によれば、マクロン仏大統領はこの日の会議で「(安全保障軍は)停戦後数時間以内に投入できるよう準備ができている」と述べた。スターマー英首相も「長期的な基盤の上に立てられた計画だ」と説明した。
この会議には、キース・ケロッグ・ウクライナ担当特使や、リンゼー・グラハム上院議員(共和党)、リチャード・ブルーメンタル上院議員(民主党)らを含む米代表団が初めて参加したことが注目される。また、イタリアのメローニ首相やウクライナのゼレンスキー大統領も同席したことが伝えられている。
結論
ロシアによる過去最大規模の空襲は、米国、NATO、欧州主要国によるウクライナ支援の強化という形で国際社会の具体的な対応を引き起こした。トランプ米大統領の今後の「重大声明」や、パトリオットミサイル追加支援の検討、そして英国・フランス主導による戦後ウクライナのための「安全保障軍」創設計画は、ウクライナ情勢に対する国際社会のコミットメントが新たな段階に入ったことを示唆している。ウクライナを取り巻く安全保障環境の変化と、それに対する各国の連携の行方が注目される。