イスラエル、ダマスカスへ「前例なき」空爆:中東情勢に新たな波紋

イスラエルが2025年7月16日にシリアの首都ダマスカスに対して実施した空爆は、これまでになく大規模であり、イスラエルが中東諸国の首都に対して比較的自由に攻撃を行う能力を持つことを改めて示しました。2023年10月以降に勃発した一連の地域紛争において、イスラエルはレバノンのベイルート、シリアのダマスカス、イエメンのサヌア、イランのテヘランといった広範囲の首都で前例のない空爆を続けています。

2025年7月16日、シリアの首都ダマスカスでイスラエル軍空爆を受けたシリア軍参謀本部の建物。ダマスカスへの大規模空爆の様子。2025年7月16日、シリアの首都ダマスカスでイスラエル軍空爆を受けたシリア軍参謀本部の建物。ダマスカスへの大規模空爆の様子。

ダマスカス空爆の背景と標的

イスラエルは、テレビで生中継されたダマスカスでの大規模爆発後、シリア軍の司令部および首都を見下ろす「大統領宮殿の周辺地域」にある「軍事目標」を攻撃したことを認めました。今回のダマスカス空爆について、イスラエルは、シリア南東部のスウェイダ県で最近発生した少数派ドゥルーズ派とベドウィン(遊牧民)間の衝突に対し、シリア暫定政府が軍事介入を行ったことへの対抗措置であり、ドゥルーズ派を保護するために必要な措置だったと正当化しています。

シリアでイスラム主義を基盤とする新政権が2024年12月にバッシャール・アサド前大統領体制に代わって発足した直後から、イスラエルは、ドゥルーズ派が脅威にさらされる事態が発生すれば軍事介入を行うと繰り返し警告してきました。また、イスラエルは1974年にゴラン高原に設けられた緩衝地帯を越えて急速に軍事プレゼンスを拡大させたシリア南部を非武装地帯とすることも要求していました。そして2025年7月14日、イスラエル軍はスウェイダでシリア暫定政府軍の戦車などの部隊に対する攻撃を開始し、同16日にはダマスカス中心部への前例のない空爆に踏み切ったのです。

過去の攻撃との比較と今後の影響

イスラエルがダマスカスを爆撃したことは過去にもあります。2011年に始まったシリア内戦中、イスラエルはシリア各地でイランとの関係が疑われる目標を継続的に攻撃しており、その中にはダマスカス市内の目標も含まれていました。しかし、これほどまでに高価値の政府目標や軍事目標を激しく攻撃したことはありませんでした。イスラエルはアサド前政権時代に何度か、大統領宮殿の破壊も示唆していましたが、実際にその巨大な施設を攻撃目標にしたのは今回が初めてでした。

アサド政権が崩壊した後、イスラエルはシリア全土を対象とした大規模な空爆作戦をすぐに開始し、旧政権が残した軍備を次々と破壊していきました。2025年7月14日に始まった最新の空爆は、シリアの新政権の軍隊に対する攻撃としては、これまでで最も激しいものと見られています。この一連の動きは、中東地域の安定に新たな緊張をもたらす可能性を秘めています。

結論

今回のイスラエルによるダマスカスへの大規模かつ「前例なき」空爆は、単なる紛争の一局面を超え、中東地域の力関係に深い影響を与える出来事として注目されます。イスラエルが自国の安全保障上の懸念から隣国首都の中心部まで攻撃対象とすること、そしてシリア新政権への明確な警告を発する姿勢は、地域の不安定化をさらに加速させる可能性があります。今後の中東情勢の推移に国際社会の関心が集まることは必至です。

参考文献

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