ローソンが「車中泊事業」に参入:コンビニ駐車場をRVパークへ活用

大手コンビニエンスストア「ローソン」が、既存の駐車場スペースを活用した車中泊施設「RVパーク」事業に参入し、注目を集めています。小売大手として確固たる地位を築いてきたローソンがなぜこの新分野に進出するのか、その背景にある勝算と、乗り越えるべき課題について分析します。

ローソンの「RVパーク」サービス概要

ローソンは千葉県内の「一宮東浪見店」「南房総岩井海岸店」など6店舗で車中泊施設を導入します。これは、既存の広大な駐車場の一角を、日本RV協会が認定する正規の車中泊施設へと転換するものです。利用者は事前ネット予約で駐車スペースを確保でき、電源ドラム貸し出しや生ごみ処理(専用ごみ袋1袋まで)といった基本的なサービスを提供します。これは実質的に、ローソンの駐車場空きスペースをRVパークに間貸しするモデルと言えるでしょう。

コンビニ大手ローソンが展開する「RVパーク」のイメージ。駐車場に停められたキャンピングカーが、新たな旅の拠点としての可能性を示唆している。コンビニ大手ローソンが展開する「RVパーク」のイメージ。駐車場に停められたキャンピングカーが、新たな旅の拠点としての可能性を示唆している。

急拡大する車中泊市場の現状と参入理由

ローソンがこの新規事業に参入する最大の理由は、「車中泊」市場の急速な成長にあります。特にコロナ禍を境に、密を避け、自由度の高い旅を求めるニーズが激増しました。キャンピングカー保有台数は2016年の約10万台から2024年には16.5万台へと増加。また、「車泊サービス(RVパーク)」の利用者は、コロナ禍前の1,071件から13,234件へ12倍に激増していることが報告されています(トラストパーク株式会社調べ)。「やむを得ない宿泊」という従来のイメージから、「自由に旅を楽しむ象徴」へと、車中泊のイメージが変化したことが、この市場拡大を後押ししています。

「スキマビジネス」としての展望と課題

ローソンにとって、この車中泊事業は「元手がほぼかからず、全国展開可能なスキマビジネス」として大きな勝算を持ちます。既存の駐車場という遊休資産を活用するため初期投資を抑えられ、全国に店舗網を持つローソンであれば、新たな収益源を確保しつつ店舗への来店促進にも繋がるという点で魅力的です。しかし、「乗り越えるべき相当な課題」も存在し、利用者のマナー管理やセキュリティ確保など、通常のコンビニ運営とは異なる宿泊施設としてのノウハウが求められます。ローソンの新たな挑戦の成否を見通す上で、これらの課題克服が鍵となるでしょう。

ローソンの車中泊事業参入は、既存インフラの有効活用と変化する消費者ニーズへの対応を示唆するものです。初期投資を抑えつつ全国展開を目指せる「スキマビジネス」としての魅力は大きい一方、宿泊事業特有の運営課題の克服が成功の鍵となります。この挑戦が、日本の新たな旅のスタイルをどこまで普及させ、定着させることができるのか、今後の展開が注目されます。

参考資料