警察官詐称の特殊詐欺を妻が見破る:「大阪県警」の一言が決め手

近年、電話を用いた特殊詐欺の被害が後を絶ちません。特に警察官や公的機関を名乗り、巧妙な手口で現金や個人情報をだまし取る事案が多発しています。北海道道南地方に住む40代の自営業男性も、先日、そのような詐欺の電話を受けましたが、彼の妻の鋭い指摘により被害を免れました。この一件は、いかに詐欺師が巧妙であるか、そして私たちがいかに警戒すべきかを改めて示しています。

「070」からの見知らぬ着信:警戒の始まり

5月28日の午後、男性の携帯電話に見知らぬ「070」の番号から着信がありました。仕事の連絡かもしれないと考えた男性が通話ボタンを押すと、相手は警察官を名乗りました。その大きな声は、すぐそばにいた男性の妻にもはっきりと聞こえました。男性は「大阪からの電話でしたが、仕事で大阪の案件も扱っていたため、何の疑いも抱きませんでした」と当時を振り返ります。しかし、その時、隣で聞いていた妻が「ハ、ハ、ハ」と笑い出したのです。妻は「だって、電話の相手、自分は『大阪県警』って自己紹介したんですよ」と指摘しました。

この「大阪県警」という言葉が決定的な誤りでした。日本では都道府県警察は「○○府警」または「○○県警」と称しますが、「大阪府」の警察は「大阪府警」が正しい名称であり、「大阪県警」という組織は存在しません。特殊詐欺を確信した妻は、すぐにタブレット端末で通話の録音を開始し、男性にはできるだけ会話を引き延ばすよう身振りで指示しました。

巧妙な手口と「かけ子」のミス:正確な住所が恐怖を煽る

「警察官」を名乗る男は、続けて男性を追い詰めるような言葉を繰り出しました。「詐欺集団の犯人宅を捜索したところ、あなた名義のカードが出てきた。私たちはあなたも犯行に加担しているのではと疑っている」と告げ、男性の名前と地番まで含めた正確な住所を伝え、確認を求めてきました。男性は「すでに詐欺だと疑っていたので回答は拒否しましたが、地番まで正確な住所を言われた時は、内心怖くなりました」と語っています。

特殊詐欺の巧妙な手口とその対策について語る、電話詐欺被害を免れた男性特殊詐欺の巧妙な手口とその対策について語る、電話詐欺被害を免れた男性

男はさらに「あなたの身の潔白を証明する必要がある」「出頭しなさい」「協力を拒むと生活面で困ることになるよ」など、男性の不安を増幅させる言葉を繰り返しました。これは、捜査への協力を求めつつ「逮捕する」と脅し、被害者を精神的に追い詰める「かけ子」の典型的な手口です。男性は振り返って「相手は20代後半の若い男で、今思えば、あらかじめ用意された台本を読み上げている感じでした。北海道の地名を間違えるなど、不慣れな様子も見受けられました」と話しています。

この事例は、もし妻の指摘がなければ、男性が詐欺に引っかかっていた可能性を示唆しています。特に一人暮らしの高齢者など、冷静な判断が難しい状況にある人々が、このような巧妙な手口にだまされる危険性を強く警鐘しています。

結び

今回の事例は、特殊詐欺の手口が日々巧妙化している一方で、意外なところでボロを出すこともあることを示しています。不審な電話を受けた際には、たとえ相手が公的機関を名乗っても、すぐに信用せず、一度電話を切って関係機関に確認することが何よりも重要です。また、周囲の人が不審な電話の内容を耳にした場合、今回の男性の妻のように、冷静な視点から疑問を呈し、被害を防ぐ手助けをすることも大切です。家族や地域社会全体で、特殊詐欺に対する警戒と知識を共有し、大切な財産を守るための対策を強化していく必要があります。


参考文献