アニメ『鬼滅の刃』シリーズの最新作、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』(以下、『無限城編 第一章』)がついに公開された。その注目度の高さは群を抜いており、劇場の規模によっては1日40回以上の豪華な上映スケジュールが組まれるところもあるほどだ。筆者は都内映画館の初日朝8時の回を鑑賞したが、開場前から多くの観客で賑わい、上映終了時にはファミリー層も目立ち、グッズ売り場には長蛇の列ができていた。平日とは思えないこの熱狂ぶりは、『鬼滅の刃』という作品が持つ圧倒的な人気を改めて実感させる光景だった。
本作で描かれるのは、鬼舞辻無惨の本拠地・無限城を舞台にした壮絶な戦いの幕開けである。
ストーリー理解の鍵:「無限列車編」からの連続性
テレビ放送や配信で『鬼滅の刃』に触れてきた視聴者の中には、時間が空いて記憶が曖昧になっているケースもあるだろう。そうした観客には、最低限『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』だけでも振り返っておくことを強く推奨する。上弦の参・猗窩座と炎柱・煉獄杏寿郎が激闘の末に煉獄が命を落とし、炭治郎たちの心に深い喪失感と怒りが刻み込まれた一連の経緯を理解しているかどうかで、物語の受け取り方が根本的に変わってくるからだ。『無限城編 第一章』は、複雑な伏線を理解しにくい年齢の子どもや、久々にアニメに触れるライト層にも配慮されており、懐の深い作品に仕上がっていることは間違いない。
圧倒的な映像表現の進化と没入感
『無限城編 第一章』が幅広い層に受け入れられる理由は、その圧巻の映像表現に他ならない。端的に言えば、“観ているだけで身震いする”ほどの映像美が、息つく暇もなく続いていくのだ。近年のアニメーション技術の進歩には目を見張るものがあるが、どのシーンもこれほどまでに完成度の高いアニメ映画を体験できる時代に生きる幸運を、心から実感させられる仕上がりとなっている。
無限城の3DCG技術:常軌を逸したクオリティの裏側
とりわけ、3DCGを駆使して描かれた無限城のビジュアルは特筆に値する。果てしなく続く廊下、足場の形が次々と変化する回廊など、その細かさは常軌を逸しているといっても過言ではない。テレビシリーズで無限城が初登場したのは「立志編」第26話、下弦の鬼たちが無惨に招集されるシーンだった。しかし今回の『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』では、無限城のクオリティをさらに高めるため、当時の3Dモデルは一切使用されなかったという。
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』のキービジュアル。上弦の参・猗窩座が迫力ある姿で描かれ、作品の壮絶な戦いを予感させる。
公式パンフレットによれば、当初、無限城が本作の画面に登場する総フレーム数を算出した際、「社内の全計算リソースを投入しても、映画完成までに3年6カ月を要する」という驚愕の試算が出たという。もし3章構成であれば、計10年という途方もない期間が予想されたが、各セクションの血のにじむような努力と試行錯誤により、この難題を克服。結果として、これほどまでの完成度を実現してみせたのである。制作陣が文字通り魂を込めて創り上げた無限城は、まさに劇場の大スクリーンでこそ真価を発揮する。
劇場体験で真価を発揮する無限城の立体表現
冒頭の炭治郎たちと柱が落下していく場面では、無限城の“縦”の奥行きが圧倒的なスケール感で表現されている。立体的な空間をフルに活用したシーンの連続に、観客は否応なく作品世界へと引き込まれていく。詳細なネタバレは避けるが、無限城の複雑な構造が最大限に活かされるのが、善逸の雷の呼吸を駆使したバトルシーンだ。雷の呼吸を使って、“ある相手”と縦横無尽に駆け巡る躍動感は、ぜひ劇場の大画面で体験してほしい。
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』における無限城の複雑な構造と躍動感あふれる戦闘シーンの一コマ。ufotableによる緻密な作画と3DCG技術の融合が、圧倒的な映像美を生み出している。
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』は、単なるアニメ映画の枠を超え、制作陣の情熱と技術が結集した、五感を揺さぶる体験を提供する。その圧倒的な映像美と臨場感あふれるバトルシーンは、家庭のテレビや配信では味わえない、劇場ならではの感動をもたらすだろう。これはまさに、『鬼滅の刃』の世界観を最大限に堪能するための、必見の作品である。
参考文献
- Yahoo!ニュース (元記事): https://news.yahoo.co.jp/articles/a50628a0d38337d3417351fe7b42c529e62ef4fc
- 『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』公式パンフレット