ガザ地区の惨状:衛星画像解析で判明した壊滅的な建物破壊率75%

パレスチナ自治区ガザ地区では、イスラエル軍の攻撃により約75%もの建物が破壊されたことが、ヘブライ大学による最新の衛星画像解析で明らかになりました。昨年9月時点で国連衛星センターが公表した破壊率66%を上回り、状況がさらに悪化していることが示されています。この甚大な被害は、仮に停戦が実現しても、今後の復興が極めて困難であることを浮き彫りにしています。

専門機関による詳細な分析

ヘブライ大学地理情報システムセンターのアディ・ベンヌン所長(63)は、イスラエル人の多くがガザの実態を知らないことに危機感を覚え、その状況を伝えるためにこの分析を実施しました。戦闘が始まった2023年10月以前と最近までの米マクサー・テクノロジーズ社撮影の衛星画像を基に、ガザ地区の建物破壊状況が詳細に調査されました。

被害の実態:地域別の破壊状況

解析の結果、ガザ地区に存在する約22万5000軒の建物のうち、実に約17万軒、つまり約75%が完全に破壊されるか、あるいは一部が損傷していることが判明しました。特に被害が深刻なのはガザ最南部のラファで89%の建物が、またガザ北部のベイトラヒヤ一帯では84%の建物が破壊されています。これらの数値は、地域によっては壊滅的な状況にあることを示しています。

ラファへの影響と「地ならし」の可能性

イスラエルは、ガザ住民を隔離する「人道都市」の建設を、特に被害が甚大なラファで計画しています。ラファでは今年4月以降、月平均で2000棟もの建物が破壊されており、イスラエル軍が計画する人道都市建設に向けて「地ならし」を進めている可能性も指摘されています。

ガザ北部における建物破壊の比較画像:2023年10月(上)と2024年1月(下)の衛星写真(マクサー・テクノロジーズ社撮影、ヘブライ大学提供)ガザ北部における建物破壊の比較画像:2023年10月(上)と2024年1月(下)の衛星写真(マクサー・テクノロジーズ社撮影、ヘブライ大学提供)

見過ごされがちな惨事:専門家が警鐘

この衛星画像による分析は、主に屋根の状態から建物の損傷を判断しているため、実際にはさらに多くの建物が破壊されている恐れもあります。ベンヌン氏は、「200万人以上の住民が家や学校、病院を失った。これはまさに大惨事だ」と述べ、国際社会にガザの深刻な人道危機への警鐘を鳴らしています。ガザ地区における広範囲にわたる建物破壊は、将来的な住民の帰還と生活再建に極めて大きな課題を突きつけています。

参考文献

  • Yomiuri Shimbun. (2025年7月19日). ガザの建物75%破壊か、ヘブライ大が衛星画像解析…昨年9月時点の国連分析上回る. Source Link