スペインの航空会社ブエリング航空が、パリ行きの便からユダヤ系フランス人の子どもたちを降機させたとして、サマーキャンプの主催者から提訴される意向が示された。この出来事を巡り、ブエリング航空は「迷惑行為」が理由だと主張する一方、保護者らは「反ユダヤ主義的行為」だと強く非難しており、両者の間で主張が真っ向から対立している。この騒動は、国際的な社会問題として注目を集めている。
サマーキャンプ主催者側の主張と法的措置
サマーキャンプ「クラブ・キネレット」の代理人を務めるジュリー・ジェイコブ弁護士は、今回の事態に対し「身体的・精神的暴力、そして宗教に基づく差別」でブエリング航空を提訴する意向を表明した。降機させられた子どもの大半は15歳未満であったと強調されており、その影響の大きさが伺える。主催者側は、航空会社の対応が不当な差別にあたると訴えている。
ブエリング航空の見解と反論
ブエリング航空は、スペインのバレンシア市発パリ・オルリー空港行きの便において、一部の乗客が「極めて迷惑な行為に及び、非常に対立的な態度を取り、便の安全な運行を危険にさらした」と説明している。同社は、「乗務員の決定が、関与した乗客の宗教に関連しているといういかなる主張も断固として否定する」と強く反論し、あくまで「すべての乗客の安全を確保するためだけに行われた」と強調した。具体的な理由として、この団体が「救急用具の取り扱いを誤り、義務付けられた安全に関するデモンストレーションを積極的に妨害し、客室乗務員の指示を繰り返し無視した」ことを挙げている。
ブエリング航空の旅客機。ユダヤ系フランス人の降機問題で提訴されたスペインの航空会社
治安警察の介入とグループの反応
ブエリング航空は、乗務員が治安警察に介入を要請し、警察が「他の乗客の安全を優先するため、問題の団体を降ろすことを決めた」と述べている。さらに、降機後も「ターミナルに到着後も、この団体は攻撃的な行動を続けた。一部は暴力的な態度さえ示した」ため、1人が逮捕されたと報告した。一方、治安警察の発表によれば、未成年者44人と成人8人が降機させられ、逮捕された1人は「降機して警官の指示に従うのを拒否した」ために拘束された後、釈放されたという。警察は「作戦中のいかなる時点でも、降機させた人々の宗教を把握していなかった」と強調し、宗教的差別を否定する姿勢を示している。しかし、キネレット側はブエリング航空の主張を「断固として」否定しており、意見の食い違いは大きい。
当事者の生の声
降機させられた子どもの一人である17歳のサムソンさんは、AFPの電話取材に対し、団体は機内で落ち着いて席に着いていたと説明した。彼は、「友達の1人が、まだホリデーキャンプ気分が少し残っていたのか、ヘブライ語で叫んだ」「たぶん大きな声を出しすぎたんだろう」と証言した上で、乗務員から警告を受け「すぐに騒ぐのをやめた」と語った。
別の子どもの母親は匿名を条件にAFPの取材に応じ、2週間のサマーキャンプから帰るところだったと述べた。12歳や13歳の子どもたちにも影響を与えたこの出来事について「正当化できる理由が見当たらない」とし、「子どもたちはまるで犬のように降ろされた」と怒りをあらわにした。また、別の子どもの母親はイスラエルのテレビ局「i24ニュース」に対し、これは「何もしていない幼い子どもたちに対する反ユダヤ主義的行為だ」と語り、警察の行為は残忍かつ不当で、「明らかに偏見に満ちている」と非難した。
対立する主張と今後の展開
今回のブエリング航空機からの降機事件は、航空会社の安全運行に関わる措置と、宗教に基づく差別行為という、二つの全く異なる主張が激しく対立する様相を呈している。サマーキャンプ主催者側が提訴に踏み切ることで、法廷の場で詳細が明らかになることが期待される。この事案は、航空会社における乗客管理のあり方、そして潜在的な差別問題に対する社会の意識に一石を投じるものとなるだろう。今後の司法判断や世論の動向が注目される。