夏の旅行先として城めぐりを計画する方も多いですが、猛暑の中での長時間散策や山城に潜む危険も伴います。歴史評論家の香原斗志氏は、こうしたリスクを避け、安全かつ快適に歴史を深く楽しめる「平地や台地の近世城郭」を推奨しています。本記事では、香原氏が選ぶ「今訪れるべき日本のお城ランキング」2025年夏編より、特に注目すべき第7位「江戸城」の魅力と楽しみ方をご紹介します。
夏の城めぐりの課題と「近世城郭」の利点
夏の城めぐりは、熱中症のリスクが伴うため、必ずしも適した時期とは言えません。炎天下での長時間歩行は体調を崩す原因となりえます。さらに、木陰の多い山城を選んだとしても、夏の山中ではヤマビル、マダニ、スズメバチ、毒ヘビ、クマなど、予期せぬ危険に遭遇する可能性が高まります。こうしたリスクを避けるため、夏には平地や台地に築かれた「近世城郭」を訪れるのが賢明です。これらは都市部に近くアクセスが容易で、整備された環境で安心して歴史に触れることができます。
歴史家推薦!第7位「江戸城」の深い魅力
大河ドラマ「べらぼう」と江戸城
現在放送中のNHK大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」の舞台である江戸城(東京都千代田区)は、今まさに訪れるべき場所です。ドラマで描かれる田沼意次や意知ら登場人物に思いを馳せながら城内を巡ることで、歴史の臨場感をより深く感じられるでしょう。このタイミングだからこそ、江戸城の歴史的背景と物語をより一層楽しむことができます。
皇居東御苑:将軍家の威信と歴史の舞台
江戸城を訪れる上で特に勧めたいのが、旧本丸、二の丸、三の丸が公開されている「皇居東御苑」です。原則として年末年始、天皇誕生日、月曜日、金曜日以外は無料で公開されており、気軽に歴史に触れることができます。正門である大手門から入ると、将軍家の威信を示す巨石を積んだ圧倒的な石垣が迎えます。
現存する建物としては、検問所だった三つの番所のほか、天守焼失後に天守代用として機能した富士見櫓、御休息所前多門などが見どころです。広大な本丸御殿跡に立ち、将軍家治と田沼意次が将棋を打った中奥や、田沼意知が斬られた表の桔梗の間の位置を確認するのも、ドラマのシーンを思い浮かべながらの貴重な体験となるでしょう。
歴史を物語る平川門
江戸城散策の締めくくりには、ぜひ櫓門や高麗門が現存する平川門から退出することをお勧めします。ここはかつて一橋治済ら御三卿の通用口として使われ、負傷した田沼意知が運び出されたという歴史的エピソードを持つ門でもあります。物語の重要な舞台となったこの門を実際に見て、その重みを肌で感じてみてください。
皇居東御苑に現存する江戸城の平川門、歴史の舞台となった門
猛暑の夏でも、江戸城は快適かつ深く歴史を学べる貴重なスポットです。大河ドラマ「べらぼう」との連動で、将軍家や田沼家の動きを肌で感じる絶好の機会となるでしょう。この夏は、リスクを避けつつ、ぜひ江戸城で日本の歴史に触れてみてはいかがでしょうか。