ロシア極東アムール州で24日に発生した旅客機墜落事故に関し、有力紙イズベスチヤは25日、運航会社「アンガラ航空」が事故の1か月前に行われた運輸当局の検査で、多数の違反を指摘されていたと報じました。これには、架空の検査報告書の作成なども含まれており、老朽化が問題視される機体が半世紀近く運用され続けてきた背景には、ウクライナ侵攻を巡る対露制裁の影響があるとの見方も浮上しています。
墜落概要と犠牲者数
事故が発生したのは、アムール州北西部ティンダから16キロ・メートル離れた山中です。地元州知事の発表によると、搭乗していた乗員乗客48人全員が死亡しました。当初、49人と発表されていましたが、その後に修正されています。この痛ましい事故は、ロシア国内の航空安全に対する懸念を改めて浮上させています。
事前検査での重大な違反内容
イズベスチヤ紙が報じた6月の検査結果によれば、アンガラ航空では無資格者による保守点検や、当日休暇中の従業員名義での検査報告書作成といった深刻な違反が判明していました。この検査を受け、同社の航空機8機が運航停止となり、4人の従業員が保守点検作業から外される措置が取られています。運輸当局は、事故発生前の今月8日付の書面で、アンガラ航空に対しこれらの是正措置を速やかに講じるよう求めていました。
事故機の情報とAn-24型の歴史
今回の事故機は1976年製のアントノフ24型旅客機でした。この機体は、アエロフロートを含む複数の航空会社で使用された後、アンガラ航空が2021年から運用を開始。2036年まで使用可能な認証を受けていたとされます。アントノフ24型は、1960年代から70年代にかけて大量生産され、旧ソ連時代の旅客輸送において主力として活躍しました。現在も地域路線を中心に多数が使用されており、その信頼性と運用コストの低さから、特にロシア国内の短距離路線で重宝されています。
アンガラ航空のアントノフ24型旅客機。老朽化が指摘されながらも運航が続けられている同型機が、ロシア極東での墜落事故を引き起こした。
過去の事故と対露制裁の影響
アンガラ航空は、今回と同じアントノフ24型機で、2011年7月にも同様の事故を起こしています。当時のドミートリー・メドベージェフ大統領は、この事故を受けて老朽化した同型機の退役の必要性を訴えましたが、その提言は実現されないままでした。ロシアがウクライナ侵攻を巡る対露制裁を受けている現状では、欧州製の旅客機の交換用部品の輸入が困難となっており、旧ソ連製の航空機を長期間使用せざるを得ない側面があるとも指摘されています。この状況が、航空安全に与える影響が懸念されています。
今回の事故は、事前検査での多数の違反、使用され続ける旧型機、そして国際的な制裁が複合的に絡み合った結果として発生した可能性を示唆しています。ロシアの航空安全基準と現状が、国際社会の注目の的となっています。
参考文献:
- ロシア有力紙イズベスチヤ (Izvestia) 報道
- 現地州知事発表
- その他関連報道