米国、原爆投下への見方分かれる – 戦後80年を前にピュー調査で若年層の「正当化」減少

米国の調査機関ピュー・リサーチ・センターは28日、広島と長崎への原爆投下から8月で80年を迎えるにあたり、米国における原爆を巡る意識調査結果を発表しました。この調査によると、米国による原爆投下を「正当化できる」と回答した人は35%にとどまり、「正当化できない」とした人は31%、「分からない」は33%に上り、戦後80年が経過する現在、原爆投下への評価が見方によって大きく割れている実態が浮き彫りになりました。

広島市中区に位置する原爆ドーム。米国の原爆投下に関する意識調査で、世代間の見解の相違が浮き彫りになる中、歴史の教訓を伝える重要な場所である。広島市中区に位置する原爆ドーム。米国の原爆投下に関する意識調査で、世代間の見解の相違が浮き彫りになる中、歴史の教訓を伝える重要な場所である。

ピュー調査が示す米国世論の現状

今回の意識調査は、2024年6月2日から8日にかけ、米国の成人5044人を対象にオンラインまたは電話で実施されました。特に注目されるのは、原爆投下を「正当化できる」と回答する割合が、若い世代になるほど顕著に低い傾向を示している点です。

世代間で顕著な「正当化」への意識差

年代別の詳細な結果を見ると、65歳以上では48%が「正当化できる」と回答したのに対し、50~64歳では40%でした。一方で、30~49歳では29%、18~29歳に至っては27%と、若年層では「正当化できる」と考える割合が大幅に減少しています。

逆に、「正当化できない」と回答した割合は、18~29歳で44%、30~49歳で34%と、同じ年代の「正当化できる」を上回る結果となりました。対照的に、50~64歳では27%、65歳以上では20%と、高齢層では「正当化できない」と考える割合は低い傾向にあります。このデータは、時間とともに原爆投下に対する米国人の歴史認識が変化している可能性を示唆しています。

性別・支持政党別に見る傾向

性別では、女性(20%)よりも男性(51%)の方が「正当化できる」と回答する割合が高い結果となりました。また、支持政党別では、民主党支持者および民主党寄りの無党派層(23%)よりも、共和党支持者および共和党寄りの無党派層(51%)で「正当化できる」とする割合がそれぞれ高く、政治的立場が意識に影響を与えていることがうかがえます。

過去の調査との比較と核兵器への見方

ピュー・リサーチ・センターは、戦後70年の2015年にも同様の調査を実施しています。当時の選択肢は「正当化できる」「正当化できない」の二つのみで、「分からない」という選択肢は設けられていませんでした。そのため単純比較は難しいものの、2015年の調査では「正当化できる」が56%、「正当化できない」が34%、どちらとも答えなかった人が10%という結果でした。今回の調査と比較すると、「正当化できる」とする割合が大きく減少していることが推測されます。

核兵器開発が世界にもたらした影響については、「より安全でなくなった」と回答した人が69%と多数を占め、「より安全になった」は10%にとどまりました。しかし、米国に限定して尋ねた場合は、「より安全でなくなった」が47%、「より安全になった」が26%と、その差は比較的小さい結果となりました。

「原爆投下正当化論」の歴史的背景と世論の変化

米国では、広島と長崎への原爆投下によって第二次世界大戦の終結が早まり、その後の日本本土上陸作戦が避けられたことで、多くの米国人と日本人の命が救われたとする「正当化論」が依然として根強く存在します。

歴史的に見ると、米調査会社ギャラップが1945年の原爆投下直後に行った調査では、回答者の85%が原爆投下を支持していました。しかし、同社のその後の調査では、戦後50年の1995年には59%、戦後60年の2005年には57%と、原爆投下を支持する割合は時間とともに減少傾向を示しています。今回のピュー・リサーチ・センターの最新調査結果は、この歴史的な流れをさらに明確にし、特に若年層において、原爆投下に対する再評価が進んでいる現状を浮き彫りにしています。

参考資料

  • ピュー・リサーチ・センター公式ウェブサイト (Pew Research Center official website)
  • ギャラップ社過去世論調査データ (Gallup historical public opinion survey data)
  • 毎日新聞記事 (Mainichi Shimbun article)