2025年の首都圏中学入試では、「難関疲れ」と「英語入試元年」という二つの大きな特徴が注目されました。しかし、今年の史上最高水準の受験状況を支えているもう一つの重要な要素として、中堅・中位校の人気が挙げられます。本稿では、どのような入試が多くの受験生を引きつけ、受験者数を増やしているのか、その背景にある理由を深掘りし、2026年入試を展望するための洞察を提供します。特に、男子受験生に焦点を当て、その動向を詳細に分析します。
首都圏中学入試における「中堅・中位校」の動向
東京・神奈川の中学入試解禁日である2月1日午前は、多くの受験生が難関・上位校に集中する傾向にあります。しかし、受験生全体の過半数は、四谷大塚の合不合80偏差値で50台(55〜59は中堅上位校)および40台までの中位校を受験しています。これらの学校群の中心となっているのは共学校であり、近年は募集が困難となり、男子校や女子校から共学校へと移行する学校が毎年のように見られます。こうした共学化が受験生の獲得に成功しているかどうかも、人気の重要な要因となっています。
男子受験生に人気の入試回とトレンド分析
新型コロナウイルス禍が収束した2023年から2025年にかけ、男子受験生はどの学校のどの入試回に人気が集まったのでしょうか。2025年2月1日に偏差値60以上の難関・上位校を受験した男子の割合は32.3%で、女子よりもチャレンジ精神が明確です。普段あまり目にしない中堅・中位校の各入試日程における受験者数ランキング(図1〜図6)を見ると、その傾向が新鮮に感じられます。特に、2023年ランキングで受験者数が少なかった入試回が2025年に上位に来ている場合、その増加が顕著であることが分かります。図1は1月入試(埼玉・千葉)、図2は2月1日午前、図3は2月1日午後、図4は2月2日午前、図5は2月2日午後、図6は2月3日午前を示しています。
地方校の「東京会場お試し受験」の現状
首都圏での中学受験では、地方の学校が東京会場で実施する「お試し受験」も重要な動向の一つです。男子受験者数で見た主な事例は以下の通りです(学校名[入試名]、2025年の受験者数、実倍率)。実倍率とは、受験者数と合格者数の比を指します。
- 佐久長聖[東京]:長野県の同校は、1月13日[(1)](1572人・1.2倍、偏差値47)と1月14日[(2)](386人・1.1倍、偏差値45)の2回実施。14日は安定していますが、13日は2023年・2024年から約200人減少しています。
- 早稲田佐賀[一般1月首都圏]:1月13日(771人・1.5倍、偏差値56)は、上位・中堅校の受験生に人気があります。
- 海陽中等教育学校:愛知県の男子校で、12月14日[特別給費生東京会場](355人・3.5倍、偏差値71)は、難関校受験生が腕試しに受験するため偏差値が突出しています。受験者数は2022年259人、2023年343人、2024年287人と隔年現象が見られます。
- また、3回行われる[東京会場]入試は偏差値51または52で受けやすい傾向にあります。12月21日[ I ](748人・1.3倍)、1月6日[ II ](144人・1.8倍)の受験者数には、横浜、名古屋、大阪、神戸など他会場の受験生も含まれています。
日本学園の新しい校舎建設現場。2025年秋完成予定で、来年からは共学化し明治大学付属世田谷に校名変更される同校の様子。
- 宮崎日本大学[首都圏]:1月12日(1458人・2倍、偏差値35)は非常に受験しやすい学校です。2023年と2024年は共に1370人・2倍でしたが、2025年は受験者数を大きく増やしたものの、倍率は変わりませんでした。模試代わりに受験して合格経験を得る目的で利用されるケースが多いです。
まとめと2026年への示唆
2025年の首都圏中学入試における中堅・中位校の人気は、受験生が難関校一辺倒ではなく、より幅広い選択肢を検討している現状を示しています。共学化を進める学校の成功や、地方校による首都圏での「お試し受験」の増加は、多様なニーズに応えようとする学校側の努力と、確実な合格や受験慣れを求める受験生側の戦略が一致した結果と言えるでしょう。これらのトレンドは、2026年以降の中学入試においても継続する可能性が高く、学校選びや受験戦略を立てる上で重要な要素となるでしょう。
参考資料
- ダイヤモンド社教育情報: 「2025年首都圏中学入試「難関疲れ」&「英語入試元年」の次は?男子受験生「中堅・中位校」の人気入試回を徹底分析」, Yahoo!ニュース, 2024年7月30日.
- Yahoo!ニュース: 「今秋完成予定で新校舎の建設が進む日本学園(東京・世田谷区)。来年からは共学化して、明治大学付属世田谷に学校名が変わる」, 2024年7月30日.