千葉・花見川区母親刺殺事件：42歳長男逮捕、最後の言葉「息子に刺された」…“ゴミ屋敷”化した家で何が起きたのか

千葉市花見川区で発生した痛ましい母親刺殺事件は、地域社会に大きな衝撃を与えています。7月18日午前、庭先で刃物が背中に刺さった状態で倒れている女性が発見され、まもなく死亡が確認されました。被害者の藤代泰子さん（68）は搬送時、「息子に刺された」と告げていたとされ、捜査は速やかに進展。自宅から逃走していた長男が逮捕されました。この事件は、一見平穏に見える住宅街の奥に潜む、ある家族の複雑な実情を浮き彫りにしています。

衝撃の通報から長男逮捕までの経緯

事件は7月18日午前10時18分、千葉市花見川区幕張町の平屋建て住宅の近くを通りかかった親族の女性からの110番通報によって発覚しました。通報内容は「刃物が背中に刺さって庭先で倒れている」という衝撃的なものでした。駆けつけた警察と消防により、住人の藤代泰子さん（68）は病院に緊急搬送されましたが、同日午後0時11分に死亡が確認されました。搬送時、泰子さんはまだ会話可能な状態であり、「息子に刺された」と自身の長男が犯人である可能性を示唆していました。

県警千葉西署は直ちに捜査を開始し、大規模な警察官を動員して“息子”の行方を追跡。通報からわずか数十分後、現場近くの路上にいた自称無職の長男、藤代良平容疑者（42）の身柄を確保しました。良平容疑者は任意同行後、同居する母親の背中を包丁で突き刺して殺害した疑いで逮捕されました。犯行は午前10時ごろとみられており、逮捕までの約1時間は自宅から逃走していた計算になります。しかし、同署の調べに対し、良平容疑者は「私の記憶として、母を包丁で刺したということはありません」と容疑を否認しています。捜査関係者によると、身柄確保時に容疑者が抵抗することはなく、白い服には返り血も浴びていなかったとのことです。凶器は一般的なサイズの包丁とされ、現在、自宅から押収された物品の分析が進められています。泰子さんの死因は肺動脈損傷の可能性があるとみられています。

“ゴミ屋敷”寸前の現場と謎めいた家族の暮らし

事件現場となった藤代さんの自宅は、数十年前から一家が生活してきた古い平屋建ての住宅です。周辺にはモダンな新築の2階建て住宅が点在する中で、トタン張りの箇所が随所に見られるその古い家屋は異彩を放っていました。

千葉・花見川区で母親が刺殺されたとされる平屋建て住宅の外観。荒れた庭には荷物が散乱し、“ゴミ屋敷”寸前の様相を呈している。

敷地内には樹木が生い茂り、家屋の内部の様子をうかがい知ることは困難でした。さらに、庭先には自転車の車輪やバケツ、色あせた衣装ケース、ビニール袋に入った何かの山が積まれ、“ゴミ屋敷”寸前の様相を呈していました。部屋の窓も黒い布のようなものでびっしりと覆われており、外部からは中の様子が一切見えないようになっていたといいます。

近隣住民が語る「ひきこもり」の息子と変わりゆく家族関係

近隣住民の話によれば、約1年前までは父親を含め3人暮らしだった藤代一家ですが、最近は母親の泰子さんと長男の良平容疑者の2人暮らしになっていたとのことです。ある近所の女性は、「お父さんがいたころは、家族3人で買い物に出かける姿を何回か見かけました。会話しながら歩くなど家族仲はよさそうでしたよ。お母さんと息子さんが2人で外出することもありました」と語り、以前は良好な家族関係だったと推測しています。

しかし、一家は町内会にも加入せず、周囲との交流はほとんどありませんでした。このため、事件の通報者である親族の女性も「付き合いがないので本当にわからないんです」と困惑するばかりで、一家の内情を知る者は少なかったようです。別の住民は、長男について「どう見ても息子さんは働いている様子がなく、たまに外出する程度のひきこもりでした。気にはなりましたが、どうして働かないの？とも聞けませんしね」と、長男が長年引きこもり状態であった可能性を示唆しています。

また、この住民によると、約1年前、父親が自宅で倒れて救急車で運ばれて以降、父親の姿を見ることはなく、ご存命かどうかも不明とのことです。父親が不在になってからの母親の変化についても言及されており、「以前は犬を飼っていて、お母さんは早朝から犬の散歩をしたりと元気そうでした。茶色いチワワをいつも小脇に抱えて出かけるので、犬の散歩というよりお母さんの散歩になっていましたが。その犬が亡くなってから、お母さんは張りを失ったようにしょんぼりとしてしまって」と、母親が愛犬の死をきっかけに意気消沈していた様子が伝えられています。

今回の事件は、近所付き合いの希薄化が進む現代社会において、孤立した家族の抱える問題が表面化した痛ましい事例として、多くの人々に様々な問いを投げかけています。捜査の進展とともに、事件の全容と背景が明らかになることが待たれます。