職場には、社内では「あの人に任せれば大丈夫」と頼りにされ、「仕事ができる人」として高く評価されているにもかかわらず、一般的な意味でのビジネススキルとは異なる側面を持つ人がいます。彼らがなぜそう評価され、出世していくのか不思議に感じることもあるかもしれません。この現象の背景には、「企業内特殊スキル」という独特の能力が大きく関わっています。特に、現在のミドル世代、とりわけ就職氷河期世代にとって、このスキルへの過度な依存が将来的なキャリアの「落とし穴」となり得ることを理解することは、彼らが生き残るための重要な戦略となります。
企業内特殊スキルとは何か？その価値と限界
「企業内特殊スキル」とは、特定の企業内でしか通用しない、その会社独自の技能や知識を指します。具体的には、社内の複雑な人間関係の把握、組織内のキーパーソンを見極める能力、根回しの巧みさ、そして稟議書が通りやすいプレゼンテーションの手法などが挙げられます。これらのスキルは、組織内で円滑に業務を進め、チームワークを最大限に引き出す上で非常に価値があります。実際に、これらの企業内特殊スキルに長けているからこそ、昇進や出世を果たすケースも少なくありません。チームとして仕事を進める上では、社内連携を円滑にする能力が不可欠であり、一概にこのスキルが悪いとは言えません。
しかし、この企業内特殊スキルに過度に固執し、それだけを頼りにしてしまうことには大きな危険が伴います。特に、多くのミドル世代（35歳から50代半ば、いわゆる就職氷河期世代）がこの傾向に陥りやすいと指摘されています。彼らは、長年にわたり特定の企業文化の中で培われたこのスキルを自身の強みと認識しがちですが、企業を取り巻く環境が変化し、転職が当たり前となる現代においては、そのスキルが外部で通用しないという大きな「落とし穴」が存在するのです。
企業内で評価されるミドル世代のビジネスパーソンが、自身のキャリア戦略について深く考える様子を表すイメージ。
ミドル世代が「本当の意味でできる人」になるための視点
企業内特殊スキルは確かに社内での成功に貢献しますが、それだけでは現代のビジネス環境において持続的なキャリアを築くことは困難です。ミドル世代、特に就職氷河期世代が今後、現在の会社に留まるにしても、転職を選択するにしても、真に「仕事ができる人」として生き残るためには、社外でも通用する「ポータブルスキル」の重要性を認識し、その習得に意識的に取り組む必要があります。ポータブルスキルとは、業界や企業を問わず活用できる汎用性の高い能力であり、例えば問題解決能力、論理的思考力、コミュニケーション能力、リーダーシップなどが該当します。
自身のキャリアを長期的に見据え、企業内特殊スキルとポータブルスキルのバランスを見直すことが、変化の激しい時代を生き抜くための鍵となります。
