2025年7月20日に行われた参議院選挙の投開票は、日本社会に様々な波紋を投げかけました。特に注目されたのは、参政党の目覚ましい躍進、リベラル勢力の苦戦、そして投票率の変化といった点です。現代においてSNSが対話の場としての機能を失いつつあり、「正しさ」よりも「印象」が選挙の勝敗を左右する時代になったと言われています。プロインタビュアーである吉田豪氏が、あえてX(旧Twitter)では深く語らなかった2025年参院選を取り巻く「風景」について、独自の視点からその深層を読み解きます。
なぜ吉田豪氏はSNSで政治を語らないのか
「豪さん、Twitterでは選挙のことそんなに書かないけれど、言いにくいことがあるのかな?」と尋ねられることがありますが、私自身、毎月配信している『噂のワイドショー』のようなネット番組など、十分に時間をかけて説明できる場では、政治に関する見解をしっかりと話しています。しかし、X(旧Twitter)で政治について語ることには一切関心がありませんし、むしろ意味がないと考えています。現在のXは、異なる思想を持つ派閥同士が罵り合う殺伐とした世界になっており、対話が成立しないからです。そのような不毛なバトルに巻き込まれることは避けたいのです。
時には、「お前もちゃんとTwitterで意見表明をしろ!」と強要してくる人もいますが、会ったこともない人からそのようなことを強いられるのは非常に不快です。あなたがXをそのような使い方をするのは否定しませんが、その使い方を他人に押し付けるのは間違っているのではないでしょうか。
しょこたんツイートへの共感とSNSの「浄化」
中川翔子さん(しょこたん)が「人を攻撃するためにSNSを使ってる人とは絶対人生でかかわりたくないです 言葉は自分に返ってくるし書いた時点でだれかがみるから すき、かわいい、おいしい、であふれたらいい」とツイートして批判された件について、私はその気持ちが痛いほどよく分かります。そのような考え方を持つ人がいても良いですし、他人に特定の行動を強制すべきではありません。
プロインタビュアー吉田豪氏が2025年参院選後のSNS環境について分析する様子
私自身も実際、少し気を抜くと、参政党批判の「おすすめツイート」でタイムラインが埋め尽くされてしまうことがあります。その度に、犬猫のツイートを表示させることで「おすすめツイート」の方向性を変え、タイムラインを「浄化」するようにしていました。参政党への批判的な意見を視界から完全に排除するつもりはありませんが、それが全てを埋め尽くすような状況にはうんざりします。だからこそ、今回はこの場で、私が感じているSNSと政治の関係について、詳しくお話ししたいと考えたのです。
現代のSNSは、多角的な視点や冷静な分析よりも、感情的な反応や特定の印象が拡散されやすい傾向にあります。2025年の参院選もまた、そのような情報環境の中で展開されたと言えるでしょう。私たちは、情報を受け取る側として、そして発信する側として、この「対話なき時代」のSNSの特性を理解し、より建設的なコミュニケーションのあり方を模索していく必要があるのではないでしょうか。