長年親しまれてきた人気番組『はじめてのおつかい』(日本テレビ系)が、7月29日の放送で東京ディズニーシーを舞台にした企画を敢行し、インターネット上で大きな議論を巻き起こしています。家族の感動的な一場面を切り取ることで知られるこの番組が、「夢の国」という特殊な環境で実施されたことに対し、視聴者からは「ありえない」「迷惑」といった厳しい意見が相次いでいます。
「夢の国」でのおつかい:企画内容と「仕込み」の背景
今回物議を醸したのは、ディズニー映画『塔の上のラプンツェル』をこよなく愛する4歳5か月の女の子が、東京ディズニーシーで挑戦したおつかいでした。2度目のディズニーシー訪問となった彼女に、母親から昼食後に突然のミッションが言い渡されます。
事の発端は、汗かきの弟の体が温かくなってきたという母親の報告。これに対し女の子は、自ら「水に濡らして使う冷感タオルを買ってくる」と申し出ました。しかし、これは前日に母親が「あると便利だね」と事前に刷り込んでいたものであり、番組側の「仕込み」が周到に行われていたことが指摘されています。さらに母親は、ピーターパン好きの父親への誕生日プレゼントとしてTシャツの追加購入も依頼。当初は一人で行くことを嫌がって涙を見せた女の子でしたが、母親の説得によって意を決し、混雑する園内へと向かい、無事にお目当ての品物を購入してミッションを完了させました。
人気番組「はじめてのおつかい」の司会を務める所ジョージ。今回のディズニーシー企画で番組のあり方が問われている
視聴者・SNSからの厳しい声:混雑と「非日常」への懸念
この「ディズニーシーではじめてのおつかい」という前代未聞の企画に対し、SNS、特にX(旧Twitter)上では否定的な声が多数を占めました。
「ディズニーでおつかいはないわ…非日常空間じゃん。普通に楽しませてあげて」といった、夢の国という特別な場所の雰囲気を壊すことへの懸念。
また、「あんなに人が多いところでやるのは迷惑すぎる」「あの場所でやらせなくても」といった、混雑する施設での撮影が他の来園者の迷惑になるのではないかという指摘が相次ぎました。
東京ディズニーシー園内に掲示されている「お子様から目を離さないでください」という注意喚起。今回の「はじめてのおつかい」企画との矛盾が指摘されている
制作側が直面する課題:専門家の見解と過去事例
このような批判が寄せられる背景には、番組制作における現実的な課題が存在します。ある制作会社のディレクターは、「ただでさえ混雑する園内で、幼い子どもが1人で歩き回る様子を撮影するのは至難の業。迷子と勘違いする客がいてもおかしくありません。撮影隊の動線も周囲に迷惑をかけかねず、慎重な演出が求められますね」と語り、安全確保と周囲への配慮の難しさを指摘しています。
実は、『はじめてのおつかい』が東京ディズニーリゾートで実施されたのは今回が初めてではありません。2018年にも、当時4歳の女の子がひいおばあちゃんのために蝶ネクタイを買いに行くという企画が、ディズニー側の協力のもと安全に行われた実績があります。しかし、「そのときもディズニーの協力のもと撮影が安全におこなわれました。しかし時代状況は変わりつつあり、そもそも“子どもを1人きりで歩かせる演出”への反発も出てくるようになりました」(前出の制作会社ディレクター)と、時代の変化とともに「子どもを一人で歩かせる」という番組の根幹にある演出自体への社会的な視線が厳しくなっている現状を浮き彫りにしています。
時代に合わせた番組づくりの必要性
今回の『はじめてのおつかい』ディズニーシー企画に対する賛否の声は、番組制作において、時代の変化や社会の価値観の多様性をどのように反映させていくかという重要な問いを投げかけています。特に、子どもをテーマにした番組においては、感動を提供する一方で、安全性への配慮、プライバシーの問題、そして公共の場における撮影マナーなど、多角的な視点からの倫理的な検討が不可欠です。視聴者の共感と信頼を得続けるためには、時代に合わせた番組づくりの姿勢がこれまで以上に求められるでしょう。
参考資料
- smart-flash.jp: 『はじめてのおつかい』と “矛盾” したディズニーシーの「注意喚起」
- news.yahoo.co.jp: 『はじめてのおつかい』東京ディズニーシーおつかい企画に賛否「ありえない」「迷惑すぎ」の声…時代に合わせた番組づくり必須か (参照日: 2024年7月30日)